でも、緑谷くん視点も書きたかった、後悔はしていないさ(ドヤァ)
── side:緑谷 ──
50m走最後の生徒、城堂千司君。
彼とは1-Aの教室に向かう時に出会った時から不思議な雰囲気を纏っていた。
しかもその不思議な雰囲気と言うのは決して能天気な…言い方は悪いけど不思議ちゃんのような雰囲気ではなくそこにいるだけで背筋が寒くなる様な冷酷な雰囲気を醸し出していた。
だけど話してみると案外(?)会話は弾んだような気もしなくもない。
まぁ、僕が一方的に語りかけていると言っても過言ではないがけどね。
そんなこんなで城堂君と一緒に教室の前に着いて扉を開くとかっちゃんとプレゼントマイクの説明の時に僕に注意した、僕が今一番関わりたくないツートップが言い争っていたんだけど、なんと城堂君、開けて直ぐに扉を閉めてしまい、目頭に手を当てもう一度開いて直ぐに閉めようとしたら阻止されてしまった。
案の定と言うべなんだろうか、かっちゃんと言い争ってた男子は僕らに向かって注意と
「まともに挨拶も出来ないとは雄英生の風上にもおけんな。おっと済まない、ぼ…俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ。これからよろしく」
「ちっ、これだから
多分そうじゃないと思うけどなぁ…。あとかっちゃんは誰彼構わず喧嘩売らない方がいいよ。
「緑谷くん…君は…あの実技試験の
え、いや、待ってなんの話?実技試験の
「俺は気づけなかった…。認めるしかない!君の観察力を!」
「は…はぁ…」
「俺は君の事を見誤って物見遊山と言ってしまった…。大変申し訳ない…」
「えぇ!?あっいや、僕はそんなに気にしてないので大丈夫と言いますか恐縮と言いますかえぇっと…僕も悪かったからお相子…じゃだめかな?」
「緑谷くん…ありがとう…」
飯田くんは無駄に暑苦しいと言うか真面目と言うか、委員長キャラが似合う人ってなかなかいないと思う。…僕は何をしてもダメダメだったけど…。
「あー!モジャモジャ頭くんだ!良かったー受かってて!」
飯田くんと和解していたら後ろから声をかけられ振り返ると試験の時に助け助けられたホンワカした子がいた。もしこの子が直談判をしてくれなかったら僕は多分、ここにはいなかったって言って過言ではなかった。
「うちは麗日お茶子!よろしくねー!」
そう言って笑顔で自己紹介をされたが…。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
僕らの足元でおことの人の声が聞こえ、視線をそちらに向けると寝袋を被った僕達の担任だという相澤先生がいた。
しかし、相澤先生の名前を聞いて脳内ヒーローライブラリに検索かけるけどなかなか出てこない。非常にもどかしい。
「さて、これから君たちには
そう言って相澤先生が取り出したのは雄英高校指定ジャージ。
だがその前に行われる入学式とガイダンスはどうするのだろうか?僕の思考は海に沈んだ。
「も、モジャモジャくん…?なんか急にブツブツ言い出してなんか怖いよ?」
「あ、ごめんね?考え事しだすと癖でやってしまうんだ…」
麗日さんには申し訳ないけどこれは簡単に治るとは思えないんだよね。
…趣味が趣味だから、とも言えるけど。
「諸君にはこれから身体測定(個性把握テスト)を行ってもらう」
相澤先生がそう言うと静かになった教室が再びざわついた。その雰囲気はこれ以上何も言わせないような気迫を感じるほどだった。
しかし、身体測定なんて入学式やガイダンスをやった後でも十分な気がするけど、何故相澤先生はそこまで拘るのかが今の僕には分からなかった。
「「「個性把握テストぉぉ!?」」」
「はぁ!?入学式は!?ガイダンスは!?」
皆が驚いている中、何とか硬直から抜け出せた頭髪が棘々しい生徒が反論するが相澤先生は開いていた眼を細め「確かに入学式やら授業ガイダンスは重要だ」と前置きを置いた。
「お前達はヒーローを目指しているのだろう?ならば、そんな事をしている暇があるのならば一刻でも早く個性を使い慣らす為の努力をしなければならない。故にそんな悠長な事をしている暇などない」
まぁ、一理ある。そう思った。確かにいざと言う時に自分の個性がどこまでできるか掌握していないと実力発揮ができませんでした、なんて日々人々の安心と安全を護るヒーローとしてあってはならない事だ。
けど相澤先生の言っていることはなんと言うか…合理性を突き止めた結果、と言っていいのかな?
「さて、文句は終わったか?それとお前ら、ここがどこだが忘れたか?ここは雄英高校、『自由な校風』が売り文句だ。これが適用されるのは何もお前達生徒だけではない。教師側も然りだ。」
相澤先生がそう締めくくると教室の空気は先程まで和気藹々したものが壊されは、緊張感が肌に張り付く様なものとなった。
「ふぅ、無駄な時間を過ごした。ではそろそろお前達は体操服に着替えろ。個性使用を禁止された体力テスト。学校でもやってきただろう?それを今からグラウンドで行う。直ちに着替えてそこに向かえ。以上だ」
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体操服に着替えてグランドへと向かう。
だけど僕自身はオールマイトから受け継いだ個性を未だ上手く扱うことが出来ない。
なまじ扱えたとしても0か100でしか使えない。オールマイトから助言を受けた筈なのに。
他のクラスメイトは個性持ちよろしく超常的な記録を取っていくが僕に関しては『個性無し』みたいに平凡な記録しか取れていない。
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ」
「ったりめーだ!無個性の雑魚だぞ!」
意識の外でかっちゃんと飯田くんが言い争っていたが、今の僕には周りを気にかけるほど余裕はなく、焦りが生じていた。
そして5種目のハンドボール投げ。
この種目は『ワンフォーオール』の特性が1番生きる。
ここでチャンスを掴めなかったらいよいよ持って入学して早々退学になんてなりかねない。
だから僕は!今ここで!記録を残さないと!オールマイトみたいにはなれない!
ボールを投げる時にワンフォーオールを使って投擲をした。
この時まではそう思っていた。その認識が間違っていたとわかるのはそう長くはなかった。
先程投げたボールは綺麗な放物線を描きながら落ちていった。
「46m」
先生からの抑揚のない声が聞こえた。
だが、そんな事よりも大事な事がある。そう、『個性』が発動しなかった。
なぜ!?どうして!?入学試験の時には問題なく使えたはずなのに!
その答えは案外呆気なかった。
「『個性』を消した。やはりあの試験は非合理的過ぎる。お前みたいに運良く入学出来てしまうくらいには」
「…『個性』を消す…それにあのゴーグル…」
『個性』を消す。簡単に聞こえるようだが本質は無理だ。
だけど僕はそんな芸当ができる人を知っている。
「アングラ系ヒーロー〈イレイザーヘッド〉!!」
こと相澤消太先生。
最初の自己紹介の時に感じたモヤモヤはこれだったのか。
ちょっとスッキリしたがそれとこれは別問題でもある。
…違うそうじゃない。考える事はそんなことではなくて以下に効率よく個性を使うかだ。
そう考えていると
「緑谷、一度しか言わない。お前はこれから先でヒーロー活動で己の個性を制御出来ず『大怪我をして守るべき存在を守れませんでした』と言うつもりか。もしそうなら直ちに雄英高校から出ていけ。己に限界を感じてしまったのなら出ていけ。次が、お前の
そんな風に言われたからはいそうですかなんて言えるわけがないだろう。
むしろ俄然やる気が出てきたと言ってもいいくらいだ。ここで立ち止まる訳には行かないんだ!
「うぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
僕はその決意を胸に抱き、2度目の投擲を行ったのだ。
次は個性把握テスト終わってオールマイトの授業の入りまで行けたらなぁって思いますはい。