あれから数日後、俺は早めに帰宅し、パソコンの画面に釘付けになっていた。背後には珍しく俺の部屋にいる小町が落ち着きなくウロウロしていた。
「……やっぱお前が椅子座るか?」
「大丈夫。やっぱお兄ちゃんがしっかり見届けないと」
「そ、そうか」
変な気合いを入れているが、まあ本人がよければそれでいいやと俺は再び画面に目を向ける。
そう、今日はラブライブの地区予選が行われていた。
現地で観たいというのが本音だったが、学校やら交通費やらの問題で家で見守ることになった。
落ち着かない気持ちで画面を見ていると、最近すっかり見慣れた三人組がステージに登場し、同接数が上がり始めた。
「やっぱりA-RISEって人気なんだね〜」
「そりゃあな。この前もぶっちぎりで優勝してたし」
「お兄ちゃんもすっかりラブライバーだね」
「それは……否定できんな」
最近二次元でのプロデューサー業も捗ってるくらいだからな。いや、これは関係ないか。
A-RISEのがスタンバイした瞬間、画面越しにもわかるくらいに場の空気が変わった。
自然と俺も小町も物音一つ立てまいと、ひたすら画面に集中した。
パフォーマンスはあっという間だった。
なんというか、凄すぎて一曲では足りないと思ってしまうくらいに今日これまで見たアイドルの中では圧倒的だった。
「……すごいね」
「……ああ」
小町の呟きにゆっくり頷き、俺は自然と拳を握りしめた。次にパフォーマンスするのは彼女達だからだろうか。
数分経つと、いよいよその名前がアナウンスされ、ステージに現れる。
「μ'sきた!μ's来たよ、お兄ちゃん!」
「ああ、わかってる」
メンバーの表情を見ると、不思議と気負いのようなものはなかった。何なら楽しそうに見える。
そして、彼女に……真姫に目をやると、その表情は自信に満ちていた。
その様子を見て、こちらも不思議と力が抜けていくのを感じた。
センターの高坂穂乃果が「よろしくお願いします!」と言うと、画面内はしんと静まり返った。
息をするのを止めてしまいそうなくらいの静寂から数秒経つとしっとりとメンバーが歌い始め、やがて音が重なっていく。
この前までのステージとは何かが違う。
それは素人目にも明らかだった。
彼女達の歌声や踊りに俺も小町もただ見とれていた。
流れる旋律に身を委ねるように、その歌詞の世界観をイメージしている時間は、ただひたすらに自由だった。
曲が終わってからしばらくは現実に帰りたくないのか、呆然としていた。
「すご……」
俺は小町の呟きに無意識のうちに頷いた。