翌日、俺は朝十時頃に真姫に電話をかけた。
彼女はすぐに出た。
「ねえ、普通はライブが終わった後に連絡してくるものじゃないの?」
「い、いや、ほら……ライブ終わった直後だと色々立て込んでるかと思ってね?」
まさか第一声から怒られるとは思わなかった。
俺の言い訳じみた返事に、真姫は溜息を吐いてから、ぼそぼそと話し始めた。
「……いけないわね。これじゃあ声が聞きたくてたまらないみたいじゃない」
「どした?」
「うるさいわね。少し黙って」
「電話の意味全否定するのやめてね」
「それもそうね。あと観てくれてありがとう。小町からメッセージが来てたわ。八幡が凄い形相で観てたって」
「目つきが悪いのはデフォだ」
「確かに……それで、どうだった?」
「あー……今までで一番よかったし、生で観れなかった不運を呪いたい。何で平日って学校行かなきゃならないんだろうな」
「最後の一文で台無しな気がするけど、ありがとう。八幡にしては嬉しい褒め方ね」
「だろ?」
「何で得意げなのよ……そっちは体育祭あるって言ってたけど大丈夫なの?」
「まあ、社会に出てやりたくない仕事をやる時のシミュレーションするぐらいだろ」
「そんなシミュレーション兼ねて体育祭参加する人初めて見たわ……」
「なるほど、それだけ先の事を見据えてるってことか」
「どこでポジティブ発揮してんのよ。先の事気にしすぎてネガティブが堪えきれてないわよ」
「……そういやあの後どうだったんだ?」
「話変えたわね。まあ、八幡の考えたとおりよ。同じ学校の生徒に囲まれた後は他の学校の子達に声をかけられまくったわ。本当に大変だったんだから」
「そりゃあ……お疲れさん」
「ねえ、今から会わない?」
「は?」
「冗談よ。いきなりそんな事言うほど非常識じゃないわ」
「いや、まあ、あれだ……気持ちはわかる」
「えっ?」
「あー、昨日遅くまでギター触ってたからだろうが、ついセッションしたくなってきたというか……まあ、今は金欠だから無理だが。来週、行っていいか?」
「……別にいいけど。私もたまには作曲とかあまり気にせずにピアノ弾きたいし」
「じゃあ、来週行くわ」
「ええ、待ってる」
それからぽつぽつと思いつくまま会話をして、電話を終えた。
……ああ、はやく来週にならねえかな。
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通話が途切れた後も私はしばらく携帯の画面を眺めていた。
八幡の様子がいつもと違う気がした。具合が悪いとかそういう意味ではなく……良い意味というか……。
勘違いかもしれないそんな感情に鼓動をはやめながら、私は体を起こし、ピアノへと向かった。