それから滞りなく体育祭は進行し、本日の見所の一つであるコスプレ騎馬戦も無事終了した。
たまにどこかから視線を感じることがあるが、今はなるべく気にしないにした。だって怖いんだもん!俺、何かしたのか?いや、そんなはずは……いや、でも……
「ヒッキー、どうしたの?」
「比企谷君、さぼらないように」
「いや、何でもない」
俺は騎馬戦に向かう二人を見送り、次の競技の準備に向かった。
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「ねえ、ちょっといい?」
「…………は?」
まさか背後からいきなり声をかけてくるとは思わなかった。あと来てるのは確信していたけど、きちんと確認する前に来られると、ぶっちゃけ怖い……あといつもより声のトーンが低い気がする。
「おま、何でこんなとこにいんの?てか、来てたの?」
「それはそっちも途中で気づいてたでしょ。もしかしてお邪魔だった?」
「いや、そんなことはないが……てか、怒ってる?」
「別に」
この感じは何かしら気分を損ねているとみた。ソースは母ちゃんと小町。俺は脳内をフル回転させ、思い当たる節を……うん、やっぱりない、というか……ある考えがちらりと浮かんだが、これを確信してしまうと、すごく気持ち悪い奴になってしまうと言いますか……。
色々考えていると、まず言うべきことがあるのに気づいた。
「ああ……言い忘れていたが、来てくれてありがとな。何つーか、まあ、割と嬉しい」
「っ!……割とは余計よ。まあ、そう言ってくれてこっちも嬉しいけど。じゃあ……頑張って」
「ああ」
真姫は急に機嫌が直ったのか、口元に笑みを浮かべ、ひらひらと手を振り、背を向けた。もしかしたら最初から機嫌が悪かったわけではないのかもしれない。
それと、俺は俺で何だか体が軽くなった気がした。
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そして、競技はラストの棒倒しに突入するわけだが、男子全員参加の注目競技ということもあり、やたら黄色い声援が飛び交っている。主に葉山に。
「ヒッキー、頑張れ!」
「頑張って」
ありがたいことに奉仕部からエールをもらったので頷くと……
「八幡!頑張って!!」
バカでかいとは違う、よく通る声が聞こえてきた。グラウンドにいる結構な数の生徒が声の聞こえた方角を向いた。そして……
「……はちまんって誰だっけ?」
「さあ?」
「ボッチのくせに」
近くにいた女子達がヒソヒソと話し合っている。まあ、そりゃそうだ。クラスの奴らも俺の名前はほとんど知らないだろう。つーか、最後ボッチって言ったの誰だ。事実だけど。
気になってチラ見すると、それらしき人物は見当たらなかった。