気を取り直してグラウンドに足を踏み入れると、材木座が打ち合わせ通りに紅組を煽ってくれていた。まさかこいつにこんな才能があるとは……。
まあ、俺もあんな派手な声援を受けたからにはやれるだけやるしかない。
やがて開始時間になり、場が静まり返ると、審判が笛を鳴らす。
そうなると、あとは全力でぶつかりに行くだけだ。紅組も白組も相手の棒めがけてひたすら猪突猛進という言葉が似合うくらいに突き進んでいく。そんな中……
「うわああぁ!!右手が……右手があああ!!!」
材木座が伊之助ばりに悪目立ちし始めた。さすがだ。ぶっちゃけあまり視界に入れたくないがな!
その騒ぎに周りの視線が集中するのを他所に、俺はさりげなく赤いハチマキの上に白い包帯を巻いた。
材木座の悪目立ちに合わせ、ボッチの呼吸・壱の型『ステルスヒッキー』で誰にも気づかれずに作業を終えると、ふと視線を感じた。あれは……真姫だ。うわあ、めっちゃ冷めた目でこっちを見てるんですけど、そりゃそうかあんだけ熱い声援送った相手が堂々と不正してるんだからな。まあ事情は後で説明するとして。
そのまま何事もなく白組の棒の近くに到達した。よし、後は包帯を外して……。
すると、目の前に誰かが立ち塞がる。
眩しいくらいの白ランを着たその男は、言うまでもなくし白組のリーダー・葉山隼人だ。
「お前、よく気づいたな」
「俺が君を警戒しないわけないだろ?」
そんな買い被られても……と何ともいえない気分になっていると、左右の肩を別の奴らに掴まれる。だが、こっちの作戦はこれだけではない。
「材木座ぁあー!!!」
既に誰も見向きもしなくなっていた材木座が砂埃を巻き上げながら、棒に突撃していく。あの体重にあの勢いなら行ける……!
数人が抑えながらもそのパワーに抗えずに、白組の棒はガランと大きな音を立てて倒れた。
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「で、結局反則負けになったのね?」
「……ああ、まあ」
責めるような真姫のジト目にもごもごと曖昧な返事をしながら、反則負けが決まった瞬間を思い出してしまう。ちなみに奉仕部の二人からも見られていた。
「まったく、堂々と包帯巻き始めた時には驚いたわ」
「あはは……」
「比企谷先輩、ズルはダメにゃ〜!」
「まあ、あれだ。今日は来てくれてありがとな。MAXコーヒーぐらいなら奢るわ」
「誤魔化そうとしてない?」
「…………」
「まあ、でも楽しかったわ。八幡、奉仕部の仕事はちゃんと頑張ったのね」
「……別に大したことはしてねーよ」
まあ、白組は負けたが、奉仕部の依頼は果たしたし、この笑顔が見れたなら良しとするか。
「それで誤魔化そうとしても無駄よ」
「はい」