新学期が始まり、早くも数日が経った頃。俺は珍しく携帯の通話機能を使っていた。
「は?変な先輩に付きまとわれてる?」
「ええ」
高校生活を無事スタートさせた西木野だが、何やらトラブルを抱えているらしい。
まあ、女子高だから先輩も女子。なので、そこまで心配はしていないのだが、とりあえず疲労感は伝わってくる。
一体どんな絡み方をしてくるというのだろうか。
「そっか……じゃあな」
「ちょっ、何よそのリアクション!後輩が変な先輩に付きまとわれてるんですけど!しかも内心ちょっと気になってるじゃない!」
「いや、まあ……てか心を読むなよ。色々不安になるだろうが。それに、俺には何も……」
「……実はスクールアイドルやらないかって誘われたのよ」
「……スクールアイドル?」
聞いてもいないのに話し始めちゃったよ……とかいうツッコミをするよりも先に、聞き慣れない単語に反応してしまう。
「部活としてやるアイドルらしいわ。私もよくわからないけど」
「……そっか」
多分、しつこい部活勧誘にあっているのだろう。変な先輩に付きまとわれているなんて言い方するから、ついゆるゆりな何かかと思っちゃったじゃねえか。
まあ、どちらにしろ俺にはどうしようもない。眠いし。
「入ればいいんじゃねえの」
「嫌よ。他人事だからってテキトーなこと言わないで」
「じゃあ一体俺は何を言えばいいんだよ」
「もう勧誘されなくなるような言い訳を考えて欲しいんだけど……小町が、比企谷さんは国語の成績だけはいいって言ってたから」
「そ、そうか……」
小町ちゃん、その言い方じゃディスってるようにしか聞こえないでしょ。俺は数学だけが苦手なんだよ。
「てか、そもそも何で嫌なのか知りたいんだが……」
「だって、私……普段ああいうの聴かないし……ていうか何で私なのよ」
「いや、それは……あれだ。人手が足りないから、とりあえず目についた可愛い女子に声かけたんじゃねえの?お前、ピアノ弾けるし「ヴェエエ!?」いや、なんだよ……」
早く寝たいがあまりに、何だか変な事口走った気はするんだが……。
「い、いきなり変な事言わないでよ!じゃ、じゃあ、もう切るわ、それじゃあ……」
プツリと通話が途絶え、突然部屋に静寂が訪れる。
……どうやら変な事を言ってしまったようだ。まあ、いいか。正直もう眠たくて仕方ない。
翌朝、俺は自分の言った事を、運悪く思い出し、悶絶するのであった。
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携帯を置き、ベッドに寝転がると、顔が熱くなってるのが、はっきりとわかった。ああ、もう……あの人何考えてんのよ……。
「か、か、可愛いって……いきなり何言ってんのよ、バカ……」
別に男子から外見を褒められるのは初めてじゃない。しかし、さっきのは不意打ちすぎた。じゃなきゃ、こんなに顔が真っ赤に……。
「真姫ちゃ~ん。あら、どうしたの?顔赤いわよ」
「マ、ママっ、いきなり入ってこないでよっ!」
「あらあら、もしかして?」
「な、何もないわよっ、いいから出てって」
うぅ……また変な誤解されたじゃない。こ、今度会ったらタダじゃおかないんだから!