「雰囲気いいよ、二人とも!!あと少しだけ笑顔柔らかくしようか!」
どうしてこうなった。
何回自分に尋ねたことだろう。
隣にいる真姫も笑みを浮かべているが、やや引きつっているのがわかる。もしかしたら同じ事を考えているのかもしれない。
先程お姉さんに言われるままによくわからない部屋に連れて行かれたかと思えば、何故かタキシードに着替えさせられた。
そして、スタイリストさんに髪をセットしてもらい、今度は式場まで連れて行かれた。
何が待っているのか、全く想像がつかないほど鈍感ではない。だが、考えすぎないようにしながら待っていると、扉が開き、先程のドレスに着替えた真姫が入ってきて……今に至る。
何故写真を撮られているかと、何やら次発行するパンフレット用に撮らせて欲しいという事らしい。要するに……モデルである。バイト代も出るようだ。そんなん真姫はともかく俺でいいのだろうか、なんて考えながらも結局引き受けてしまった。
……嘘と思われるかもしれんが、決してバイト代に釣られたわけではない。
「ねえ、八幡聞いてる?」
「はっ?あ、悪い。ぼーっとしてた」
「よくこの状況でそんな風になれるわね。イミワカンナイ」
「……すまん」
「いいから。はやくこっち向いて」
「え?」
「向かい合ってって言われたでしょ?ほら、はやく!」
「あ、ああ」
言われるまま向かい合うと、彼女のその鮮やかさにすぐさま目を奪われてしまう。
もちろん美人だとか、そういう表面的な部分はだいぶ前から知っていたわけだけれども、それだけではないもっと奥の部分から滲み出る何かに俺は魅せられていた。
「よし、八幡くん!真姫ちゃんの肩に手を置いてくれる?」
「え?あ、はい?」
イメージはできたもののどうしていいかわからずにいると、真姫は俺の両手首を掴み、自分の方に置いた。
彼女の華奢な肩に置かれた手からは、手袋越しにやわらかな体温が伝わってくる。
「真姫ちゃん、ちょっとの間目を閉じて!」
「は、はい!」
真姫が目を閉じると、その長い睫毛と、ほんのり赤い頬と、いつもと違う雰囲気の唇に目を奪われる。
自然と胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
撮影されている緊張感は確かにあるのだが、どこか違う場所……例えば夢の中にいるようなふわふわした気分に浸っている。
できることならもうしばらく……
「はい、オーケーよ!どうもありがとう!!」
そうは問屋が卸さないと言わんばかりに終了の合図が出る。
淡い空想は雲散霧消してしまった。
「……真姫?」
「えっ?ああ、終わったみたいね」
「…………」
「…………」
真姫は何故かしばらくこちらを見つめたままで、俺も同じように目を離せないでいた。