戸部からの依頼で奴と海老名さんがとりあえず二人になれる、もしくは会話の頻度を増やせるようアシストしているのだが、さりげなく邪魔されている気がする。誰とは言わないが。あとあんまり依頼っぽく感じなかったが、当の海老名さんからの言葉も気になる。
……これまでどおり仲良く、か。まあ、多分そういうことなんだろうな。
「八幡」
「っ!?……びっくりしたぁ。え、お前何でいんの?もしかしてストーカー?」
「違うわよ!用事が終わったら自由に見て回っていいって言われたからこっち来たの!たまたま観たい場所が色々あったから……」
「凛達は真姫ちゃんについてきたにゃ〜!」
「こ、こんにちは……」
最早クラスの連中より見慣れた顔。いや、実際そんなわけはないんだが、会話した回数ならダントツで多いだろう。
三人が目の前にいることに、何故か安堵の息を吐いた。
「どうかしたの?」
「いや、別に」
「ていうか、一人で何してるの?自由行動って言っても班で行動するんじゃないの?もしかして……」
「いや、買い物してるの待ってるだけだから。ボッチだけど修学旅行でハブられたとかじゃないから。ちゃんと班行動満喫してるから」
「最後のは嘘っぽいわね」
「うぐぅ……」
「もしかしてこっちでも奉仕部の活動でもあるの?」
「え、何怖いんだけど。エスパーなの?」
「うそ、当たったの?」
どうやらテキトー言っただけらしい。どちらにしろ凄いじゃん。
彼女は、当たり前だが特に喜ぶでもなく、目をパチクリさせていた。そんなに驚いているのか。
「八幡らしくないわね。そんなストイックに部活に打ち込むなんて」
「……そっちかよ。まあ確かにそうなんだが」
「何だかんだ言って断らないからね、八幡は」
「断らないんじゃない、断れないんだ。下っ端の宿命だな」
「そういうことね。それなら納得。ちょっと浮かない顔してるのも」
真姫の瞳がほんの数秒だけ真剣味を帯びた。おそらく彼女は察してしまったのだろう。俺が今依頼について色々考えていたことも。つーか、そんなの悟られるとは情けない気分だ……。
「何つーか……まあ、あれだ。これが休日出勤の気分かって未来を憂いているだけだ。やっぱ専業主夫目指してぇよな」
「……バカ。あんまり無理しないでよ」
「別に……いや、助かる。てか、あいつら買い物終わったみたいだからもう行くわ。じゃあ、またな」
「ええ。また後で」
真姫も身を翻し、何故か少し離れた場所にいた小泉と星空の元へ歩いていった。
俺は一度だけ振り返り、その背中と揺れる髪を見てから、自分の班に合流した。
頬をふわりと撫でる風は昨日より冷たかった。