さて、どうしたものか……。
なんか勢いで少し歩かないか、なんて言ってみたけど時間が時間だし、奉仕部放置してきちゃったし、自分が何をどうしようとしていたのかわからなくなってきた。
ああ、もうイミワカンナイ!
……おっとキャラ崩壊しすぎたぜ。てへぺろっ!
「あの、その辺歩くのはいいけど、そんな黙り込んだまま一人で表情ころころ変えるのやめてくれない?」
「……悪い」
しまった。一人で考え込んでいるうちに思ったより歩いたみたいだ。辺りは人通りもなく、車の行き来もまばらで、街灯の明かりも頼りなかった。
俺は気を取り直して真姫の横顔を見てから、ゆっくりと口を開いた。
「あの後、ずっとついてきてたのか?」
「……ごめん」
「いや、別にいいんだが。何か用があったのか?」
「心配だったのよ。またこの前みたいな事やるんじゃないかって……」
真姫は視線はこちらには向けずにぽつりぽつりと言葉を紡いだ。
俺も再び前の薄暗い歩道に目をやる。
「……別にこの前もそんな悪いことにはなってねえよ。依頼は解決したし」
「そうかもしれないわね。でも前半は違うわ」
真姫は唐突に俺の左手を握りしめた。
そのひんやりした感触に驚いていると、真姫はこちらを向いて、真っすぐ澄んだ瞳を向けていた。
「八幡は傷ついた」
「……いや、まあ、何つーか、それぐらい何て事……」
「何て事ないわけない」
真姫は手をつないだまま、距離を一歩詰めた。
ふわりと髪が揺れ、甘い香りが飛び散る。
彼女の目は潤んでいた。
「八幡が傷つくと……私も苦しくなるの」
「…………」
「さっき、どうするつもりだったの?」
「それは……」
言えなかった。
それと、正直に言うと真姫があの場に出てこなくても、予定していた行動が取れたかどうか怪しい。
自分の気持ちに気づいてしまった以上、嘘でも他人にそういうことが言えたかどうか……
「……悪かった」
「別に謝らなくてもいいわ。私こそ変な事聞いてごめん。ただ私に悪いと思ってるなら……」
真姫は何かを躊躇うように視線を落とし、再び上目遣いになる。
「……抱きしめて。思いきり」
「は?」
いきなりな提案に素っ頓狂な声を上げると、真姫はさらに距離を詰めた。
甘い香りが濃くなり、頭がぼんやりとしてくる。
「私の事、どう思ってる?」
「……言葉で言い表せないくらい、大事だから……上手くは言えないが、もっと深くお前の事を知りたいと思ってる」
「ふふっ、本当にまどろっこしい言い方で……あ」
真姫が何か言い終えるよりはやく俺は彼女を抱きしめた。
華奢で壊れてしまいそうな柔らかい温もりを、強く、強く、ただ抱きしめた。