「……ねぇ」
「…………」
「ねぇ」
「…………」
「こうしていたい気持ちは私も一緒なんだけど……あなた、修学旅行中でしょ?もう戻らなくてもいいの?」
「……悪い」
真姫に促されるまま、そっと彼女の体を離すと、やはり名残惜しさが残った。それと同時に体のあちこちに彼女の温もりが残っていた。
真姫と再び目を合わせると、彼女の瞳はさっきとは違う何かで濡れていた。
「い、いきなりがっつかないでよ、馬鹿。別に修学旅行から帰ってきてからゆっくり会えばいいじゃない」
「……それ、京都まで来たお前に言われるとは思わなかったんだが」
「うるさいわね。言っとくけど、浮気なんてしたらゆるさないからね」
「いや、しないから。言っとくが最近お前の事しか考えてねえからな」
「っ!……言うじゃない。まあ、こっちも同じだけど」
「……そろそろ行くか」
「そうね。いきなり何やってんのかしら、私達」
「さあ……まあ、いつもこんな感じと言われればそうかもしれん」
「…………はい」
真姫は手を差し出してきた。
俺はつい忘れていたことを申し訳なく思いながら、彼女の手を握りしめ、ゆっくりと歩き始めた。
さっきと違う温もりが、胸の奥を温め、何かが溶けていくような気持ちになった。
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翌朝、俺は奉仕部の二人に頭を下げていた。
「あれは……なんだったのかしら?」
「いきなり現れた女の子といなくなっちゃうんだもん。びっくりしたぁ」
「まあ、あれは……今は触れないでくれ。ただ、あのタイミングでいなくなったことに関しては本当に悪かった」
「それは別にいいのよ。あの後話し合ったところで特に何かかわるわけでもなかったし。ただ、あの時貴方がやろうとしていたこと……あのやり方は、嫌いだわ」
雪ノ下は迷いの感情をその瞳に見せた……気がしたが、そのままその場を後にした。
「え?あ、ま、待ってよ、ゆきのん!」
由比ヶ浜は雪ノ下と俺を交互に見比べながら、とてとてと雪ノ下の背中を追いかけていった。
今回は真姫や奉仕部の反応を見る限り、俺のやり方が良くなかったのだろう。
だが、それに関して今あれこれと言い訳を並べ立てたところで何の意味もない。
次の依頼でまあ、100点とはいかないまでも全員が納得できる形にできればいい。
俺は首筋に手を当て、ひと呼吸置いてから、自分の班が待つ場所へと歩き始めた。
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こうして一応、真姫とそういう関係というか、恋人同士になったわけだが、まずは休日に公園やら何やら行くと思っていた。
なのに、何故俺はその翌週の休日にギターを抱え、彼女と人前に立っているのだろうか?