「ハロウィンパーティか」
「ええ、同じ地区のスクールアイドルが秋葉原でに集まってコスプレしてライブするのよ。別にコスプレまでしなくてもいいと思うんだけどね。いつも衣装着てるし」
真姫の身も蓋もない言い方に苦笑しながらも、その声の響きに少し弾んだものがあるのを俺は聞き逃さなかった。
「まあ、あれだ。ツンデレを全うしようとするその姿は感心する。そのまま突き進んでくれ」
「何の話よ!?」
どうやらツンデレという表現がお気に召さなかったらしい。まあ仕方ない。あっさり認めるのもツンデレとは言い難いからな。
「それで今曲作ってるのか?」
「ええ、そっちは多分ギター弾いてるんでしょ?」
「よく電話越しにわかるな」
「そっちもね。次のライブの準備は大丈夫そうね」
「いや、で、できれば次は事前に連絡頼む。またいきなり変な音出したくないからな。あれめっちゃ恥ずかしかったわ」
「それは無理よ。だって私にも予想できないもの」
「ああ、ならしゃあないな。こっちが備えるしかないな」
「でしょ?」
真姫の言葉の説得力がありすぎて最早頷くしかないわけだが、そうなるとイントロは重点的に練習しといた方がよさそうだ。
練習の計画を立てながら、俺はカレンダーに目をやった。
「ハロウィンの日なら週末だし、見に行けそうだ」
「そう。ならよかったわ」
「小町も連れてっていいか?そろそろμ'sのライブ観たいって言ってたし」
「もちろんいいわよ。それに小町にもそろそろ報告しなきゃでしょ?」
「…………」
「何?気づいてないとでも思った?」
「いや、ほら、タイミングとかね?」
このズレた間の悪さもきっと俺のタイミングだろう。誰の心も和ませる気はしないが。
「意外、かもね。何なら帰ってすぐ報告してるかと思ったわ」
「どんなハイテンションなシスコンだよ……確かにあの日言っとけばこうならずに済んだんだが」
「だから今日言えばいいじゃない」
「うぐぅ……」
ぐうの音も出ない正論である。「うぐぅ……」は出たが。
まあ、言いそびれたのは事実だし、怒られるのは覚悟しとくしかない。
真姫はこちらの心情を察したのか、小さく笑った。
「大丈夫よ。私だってまだ花陽と凛に言えてないし。二人で謝れば大丈夫……多分」
「そっちも言ってなかったのかよ。じゃあ、心強いな」
「心強いがこんなに汚れて聞こえたのは初めてだわ。じゃあ、当日楽しみにしてて。良い曲できたから」
「了解。じゃあこっちもそろそろ練習戻るわ」
「ええ、こっちはもう寝るわ。おやすみ」
「おやすみ」
通話が途切れると、今度は静寂が生まれる。
俺はそれにしばらく耳を澄ませ、ギターをまた弾き始めた。