「そっかぁ、ヒッキーも学校の外ではだいぶ裏の顔があったんでね」
「その中二病っぽい響きやめてくんない?もうそういうの卒業したんだが……」
「さりげなく黒歴史を自分で暴露するのがやめたほうがいいわよ、比企谷君」
「今のは初めて聞いたわね……」
真姫が少し引いた顔をしている。どうやらうっかりいらん過去を口にしてしまったらしい。
「誘導尋問やめてくんない?つまびらかにしゃべっちまったらどうすんだよ」
「してないよ!」
「してないわね」
「誰もしてないから安心していいわ」
「え、何?お前ら実は陰でこっそり会ってたの?そうなの?」
この音楽活動の延長戦か、奉仕部活動の延長戦かよくわからない空気感に、何ともむずかゆい気持ちになりながら首筋に手を当てていると、横から声が聞こえてきた。
「あの~、もう演奏しないんですか?」
「さっきの曲もう一回聴きたいです~」
唐突な奉仕部との遭遇でつい忘れていたが、今は路上ライブ中だった。
てか、よく待っててくれたな、なんて思いながらギターを再び構えると、真姫もこくりと頷いた。
「邪魔にならないように少し下がりましょう、由比ヶ浜さん」
「うん、そうだね。二人とも頑張って!」
由比ヶ浜のエールに、真姫は「あ、ありがとう……」と恥ずかしそうに呟き、気持ちを落ち着けてから、イントロを弾き始めた。
俺はさっきよりも肩の力が抜けた状態で、音の強弱に気を遣う余裕ができたことに少し驚きながら、真姫のピアノの音にギターの音を重ねた。
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「いや~、すごかったね!真姫ちゃん、ピアノも歌もめちゃくちゃうまいんだもん!」
「そうね。素晴らしかったわ」
「あ、もちろんヒッキーもよかったよ!あんなに弾けるなんて思わなかった!」
「ええ、それは確かに驚きね。来年は文化祭でステージに立ったらどう?きっと最高の引き立て役になると思うわ」
「なんで葉山の前座前提なんだよ。てか、弾き語りとかできねえぞ」
「別にいいんじゃない?そろそろコーラスやってもらおうと思ってたところだし」
「え、マジで?初耳なんだけど……」
「だってその方ができる表現が増えるでしょ?それに……八幡の声は良いと思うし」
「……そ、そうか」
ストイックすぎる発言への驚きをかき消すような、ぽつりと紡がれた甘い呟きにどう反応したものかと頬をかいていると、雪ノ下と由比ヶ浜が目を合わせ、何故か頬を染めていた。
「……お熱いわね」
「あはは……見てるこっちが照れちゃうな」
「「…………」」
二人のリアクションに今度はこっちが目を合わせてしまった。