「じゃあね、真姫ちゃん!今度ミューズのライブ観に行くね!」
「ありがとう、いつでも来て」
「お邪魔してしまったわね。それじゃあ、また」
「おう」
奉仕部の二人と別れると、真姫は大きく伸びをした。
「良い人たちね」
「……そうかもな。一応」
「ふふっ」
「何だよ」
「私の知らない八幡が見れて得した気分ね」
「えっ、そんな違う?全然そんなつもりないんだけど……」
「そんなはっきりしたものじゃないけど、やっぱり違うものよ。また、四人で話してみたいわね」
「なんか緊張感がアレなんでなるべくまだ先で頼む」
「はいはい。ねえ、今から八幡の家に行かない?」
「まあ、まだゆっくりできるしな」
『八幡の家に行かない?』という提案にほんの一瞬、いや、数秒だけドキがムネムネしちゃったが、悟られぬように静かにその妄想を消した。うん、音が出ると思ってる時点でだいぶやばい。
「なんで空見上げてんの?心配しなくても太陽の光で溶けたりしないでしょ?」
「いや、今溶けてしまいたい気分になっただけだ」
「本当に何を考えてたのよ……」
真姫の呆れた視線を向けられながら、俺は彼女の隣に並び、再び内心のあれこれを悟られないように気をつけながら歩き始めた。
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自宅に到着し、玄関の扉を開けると、家がしんと静まり返っているのに気づいた。どうやら小町は外出してしまったらしい。親父と母ちゃんは休日出勤らしい。ったく、休みの日には休めっての。
「お邪魔します」
「……おう。とりあえず先に部屋に行っててくれ。飲み物持ってくから」
「ええ。ありがとう」
真姫が階段を上がってドアを閉める音が聞こえると、俺は自然とうずくまってしまった。
……小町、何故出かけてしまったんだ。
付き合ってから初めて家に来たということもあるのか、さっきよからぬ妄想が頭をよぎったからなのか、変に意識してしまう。並の男なら既に下心が見透かされてドン引きされている事だろう。ボッチメンタルがこんなところで役に立つとは……。
とはいえ、あまり待たせるわけにもいかないので、心を無にして俺はお盆に載せた水に意識を集中させ、階段を一歩一歩ゆっくり階段を上がった。
すると、真姫が部屋から出てきた。
「あっ、私もやっぱり運ぶの手伝おうと思ったんだけど……」
「い、いや、大丈夫だ。待たせて悪い」
真姫につづいて部屋に入ると、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐってきた。
もう慣れたはずなのに、こんなにも理性を揺さぶってくるとは……。
二人して腰を下ろすと、真姫はじっとこちらを見て唇を動かした。
「ねえ、八幡……する?」