「……は?」
「いや、だからその……私達のオリジナルの曲作り」
「…………あ、ああ、いきなり何かと思ったんだけど」
「だってせっかくあんなに良い反応もらえたんだから、オリジナルの曲とかやってみたくならない?」
「俺、曲作りとかまったくわからないんだけど」
「別に知識とかいらないわよ。なくてもやってるプロの人も結構いるわ。あと八幡には歌詞書いてもらおうかと思ってるんだけど」
「お、おう」
唐突に重大な役を仰せつかって、さっきまでの変なドギマギは雲散霧消してしまったが、不思議と断る気分にはなれなかった。どうやらだいぶ毒されてきているらしい。
ベッドに腰を下ろし、ようやく落ち着いた気分になると、真姫は立ち上がり、隣に腰を下ろしてきた。
スプリングが軋み、少し体が彼女の方に傾いた。
ふわりと甘い香りが鼻孔をくすぐり、そのままむずかゆい沈黙が訪れた。
微かな息遣いがやけに耳朶を撫で、心の奥底にひた隠しにしてきたものを引きずり出そうとしてくる。
俺は少しの間瞑目して気持ちを落ち着け、彼女の手をそっと握りしめた。
真姫はぴくりと肩を揺らしたが、またこちらに深く身を委ねてきた。
「…………」
「…………」
甘い香りが馴染んできて、互いの鼓動さえ聞こえてきそうな静寂に、今度は心が穏やかになっていく。
真姫は少し肩を離し、こちらに顔を向ける。
その気配を感じ、隣を向くと、やはり目が合った。
「八幡、その……」
「…………」
彼女らしからぬ不安げな瞳は、その心を代弁するかのように揺れていて、それを取り除いてやりたい一心で、俺は手を強く握りしめた。
「真姫……好きだ」
「私も……好き。ふふっ、らしくないわね。いきなり」
「やっぱり本当の気持ちはきちんと口にしておきたい。せっかく伝えられる相手が目の前にいるんだからな」
「……それを伝えられるのは言葉だけ?」
「…………」
その言葉に呼応するように彼女の瞳が閉じられる。
こっちも目を閉じるのがマナーって何かで読んだな。
俺は彼女の薄紅色の唇を見つめ、緊張にはやる体を宥めながら、ゆっくり、ゆっくりと自分のをそこに重ねた。
「…………」
「ん…………」
どのくらいそうしていただろうか。
一瞬のようにも思えるし、随分長くも感じる不思議な時間。
確かなのは、このことを一生忘れることはないだろう。
やわらかな感触に名残惜しさを感じながら、再びゆっくりと話すと、真姫は夢を見ているかのようなうるんだ瞳を向けてきた。
「……もう一回」
「……同じ事考えてた」
今だけは彼女の事だけで満たされていたかった。