「じゃあ、今日はありがとう」
「ああ、帰り気をつけてな」
「ママが駅まで迎えに来てくれてるから大丈夫よ」
「まあ、何つーか……電車でも」
「……ありがと。何かあったら連絡するわ。ふふっ、意外と過保護なのね。八幡は」
「じ、自分でも驚いてる……」
「それじゃ、もう行くわね」
「ああ、それじゃあ。また」
「…………」
真姫はムッとした表情を見せ、スタスタと歩み寄ってきた。
肩で風を切るという表現がしっくりくるくらいの勢いの彼女に、俺は思わず後退りしそうになった。
「……それだけ?」
「は?」
殴られるんじゃないかと身構えていたら、至近距離から上目遣いを向けられ、また鼓動が跳ねた。
真姫はやや頬を膨らませたジト目でこちらを見あげている。
……いや、いきなり可愛すぎるだろ。もう、電車来なくて良いんだけど。いや、良くないか。だが、本音を言えば……。
「ねえ、何で黙ってんの?私が空回りしてるみたいじゃない」
「いや、すまん……可愛すぎた」
「っ!い、いきなりそんな事言わないでよ!びっくりするじゃない!」
「いや、どっちなんだよ……まあ、頼まれなくても機会があれば口にするのも吝かではないというか……」
真姫は耳まで真っ赤にしながら、さらに距離を詰め、俺の胸元に手を置き、ぽつりと囁いた。
「……好き」
たった二文字の甘い囁きに心が溶かされるような気分になる。
そして、離れたかと思えば、真姫はいつもの表情に戻っていた。
「顔真っ赤すぎ。じゃあね」
スタスタと早歩きで改札を通り抜け、振り返りもせず階段を上がっていく彼女の背中を見て、自然とひとりごちた。
「いや、お前もだから」
体までとろけてしまったのか、俺はしばらくその馬に立ち尽くしていた。
……破壊力ありすぎだろ、今晩寝れそうにないんだが。
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次の日、学校でも私は八幡とのあれこれを引きずっていた。
……私は何て真似をしてしまったのかしら。
ああ、もう!イミワカンナイ!
普段なら、そのまま「また今度」くらいの軽い挨拶で別れていただろう。
それを、まさかわざわざ戻って、あんな事を言うなんて……。
いや、好きなのは事実だし、恋人同士だから言うことなんて幾らでもあるんだろうけど!パパやママだって結構……あ、それだと私達がまるで夫婦みたいに……
「……ん!真姫ちゃん!」
「け、結婚なんてまだよ!」
「にゃ?どうしたにゃ?」
「ま、真姫ちゃん?」
「え?……あ」
気がつくとμ'sのメンバーの視線か集まっていた。どうやら考え事に耽ってしまっていたらしい。ああ、もう、今日はこんなのばかりね。気を引き締めないと。
「ごめん……」
「も〜、真姫ちゃんったら新曲がラブソングになったからって比企谷先輩の事思い出しちゃダメにゃ〜」
「り、凛ちゃん!」
「にゃ?」
「えっ、真姫ちゃん彼氏いるの〜!?」
私は答える前に凛にデコピンをした。