クリスマスまでの期間、お互いに忙しくて会う時間はなかった。というか、お互いそういう発想もなかった。
電話はしていたが、あまり時間も取れず、生まれて初めて感じるタイプの寂しさみたいなものを感じながら、イベント前日を迎えた。
今はイベントの会場である地域交流センターにて、テーブルを並べ、当日使う物の最終確認をしようとしている。
……もちろん目の前の事もしっかりやらなきゃいけないが、やっぱり色々気になってしまう。心配というか、何というか……。
いや、違うな。これは建前で、本当は俺が会いたいだけなのだ。そして、安心したい。
何だ、これ……もう心底惚れてんじゃねえか。
「ヒッキー、どうかしたの?」
「ん?いや、ちょっとぼーっとしてただけだ」
「そっか。うーん……今日はもう上がっていいんじゃない?」
「いや、さすがにそういうわけには……」
「だってイベント決まってからずっと遅くまで頑張ってたじゃん。だから、ね?」
「…………」
由比ヶ浜の言葉の裏に見え隠れする意図に気づきながらも、俺はどうしたものかと動けずにいた。
すると、由比ヶ浜の隣にいる雪ノ下が笑みを見せた。
「由比ヶ浜さんの言うとおりよ。疲れをためたまま本番を迎えるのは効率的じゃないわ」
「まさかお前にそれを言われるとはな」
「自分が通った道だから説得力があるんじゃないかしら」
「……確かに。じゃあ悪い、先に上がるわ」
「うん、お疲れ〜」
「お疲れ様。明日は遅刻しないようにね」
「ああ」
俺は二人に心の中で頭を下げて、その場を後にした。
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「ふぅ……」
本番前日の確認も終え、明日への緊張がだいぶ高まってきた。
明日は穂乃果達が学校説明会があるので、事前のリハーサル時間をあまり取れない。
だからこそ今日中にしっかり仕上げておく必要があるので、一回一回の集中力がいつもより遥かに凄まじいものがあった。
それとギリギリまで作曲が長引いたのもあって、さすがに今日はくたびれた。
色々考えながら歩いていると、周りの風景が自宅の近くに変わっている。
……八幡も明日、イベント当日ね。大丈夫かしら。
いえ、自分が会いたいだけなのにこんな事考えても仕方ないわね。
まさか自分がここまで誰かを好きになっちゃうなんて……。
明日はお互いに直接見れないのは残念だけど、その分届くようなパフォーマンスをしたい。
「……八幡も頑張って」
「……わかった」
「え?」
ぽつりと零れた独り言に対して、突然聞き覚えのある声が聞こえてきたので、俯きがちだった顔を上げた。
すると、そこには八幡がいた。