そのままと口にしては見たものの、自然と体が動き、真姫と唇を重ねていた。
とろけそうな理性の中で、少し強引すぎたかと思いもしたが、真姫もこちらの頭を両手で包み、自分の唇を押しつけてきた。
予想よりも強い力によろけそうになったが、そこは男の意地でなんとか耐える。その甘い感触はがんがん理性を削っていた。
お互い息継ぎのために体を一旦離すと、真姫はとろんとした目でこちらを見上げていた。
至近距離で互いの息が混じり合う中、真姫が今度は自分から唇を重ねてくる。
「っ…………」
「ん……んん……」
どうしようもなく想いが溢れてくる。
たまらなくこいつが好きだ。
このまま夢みたいな気持ちに溺れていたい。
再び唇が離れると、濡れた瞳が妖艶な光を纏っている。
俺は彼女を力いっぱい抱きしめ、その髪をそっと撫でた。
さらさらと繊細な感触が指先に馴染んでいくのが気持ちよくて、自然と口元が緩む。
だが、気持ちは昂り続け、俺は拙い手つきで彼女のコートを脱がせた。ボタンを一つずつ外す間、手が震えていたが、それでも手を止めることはなかった。
真姫は目を潤ませ、こちらを見つめている。コートを静かに床に置くと、セーター越しに細い肩が自分の手と同じように震えているのがわかった。
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯八幡?」
こちらの視線の先に気づいたのか、真姫が小首をかしげる。
「⋯⋯悪い、少し焦りすぎた」
「⋯⋯⋯⋯」
こちらの言葉に合わせて、真姫はこてりと額を俺の胸にくっつけてきた。
「いくじなし」
「⋯⋯それは、反論できないんだが」
「まあ、私も人の事言えないんだけど。ねえ、八幡」
「?」
「もう一回キスして」
俺はすぐに真姫を引き寄せ、今度は気持ちを落ち着けるために唇を重ねた。
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ああ、なんかさっきまで夢の中にいたみたいな感覚ね。
その場の雰囲気だったり、気持ちの高まりだったり、あれこれが重なり合った結果、ものすごい一線を越えかけていた。
その事実に対して意外なほど驚きはなかった。
ただ胸の高鳴りがしばらく止まりそうもない。
八幡にちらりと目をやると、耳まで真っ赤にして、後頭部に手を当てている。
そして、こっちを向き⋯⋯すぐに目を逸らせた。
私もつい横を向いてしまう。
⋯⋯これはしばらく思い出して恥ずかしくなるやつね。ああ、もう!バカ!ボケナス!八幡!
「悪い。てか、八幡は悪口じゃないと思うんだが⋯⋯」
どうやら口に出してしまっていたらしい。
何故かそれがおかしくて、今度は吹き出してしまう。
「ふふっ、気にしなくていいの」
「いや、気になるんだが⋯⋯」
八幡はそう言いながらもこちらにつられて頬が緩んでいる。
しばらく私達は静かに笑い合っていた。