結局それからはお互いに楽器を持ち、いつもと同じような時間を過ごした。
最初はさっきまでのあれこれで、普段ならミスしないような場面でも間違えたりして、つい互いに苦笑し合ったりしていたが、回数を重ねるごとに、調子を取り戻してきた。
何なら普段より調子がいいと感じる瞬間もあり、自然と笑みが零れた。
「今日は調子がいいじゃない。ようやく煩悩が吹き飛んだ?」
「いや、煩悩の原因が目の前にいるから頑張ってるだけだ」
「誰が煩悩の原因よ!いや、まあ事実かもしれないけど!もっと他の言い方あるでしょ!」
「そりゃあ好きな人が目の前で見てるんだから気合い入れて演奏するだろ」
「よろしい」
「煩悩の原因って言い方も悪くないの気はするけどな。ほら、こう夢中になってる気がするっつーか」
「いや、ただ下心が表に出てるだけだから。二人きりの時以外は自重しなさい」
「今まさに二人きりなんだが」
「⋯⋯さあ、もう一回合わせましょう」
「⋯⋯了解」
それ以上反論は許さないという目つきで睨まれたので、俺は苦笑しながら大人しく従うことにした。
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しばらくセッションした後は、チキンやケーキを食べながら、思いつくままに色んな話をした。結局はこういう時間が一番好きなのかもしれない。
「えっ、八幡の家にはサンタさん来ないの?」
「ああ、何つーか⋯⋯ウチ、煙突ないんだよ。だから入りたくても入れないっつーか」
「そう、それなら仕方ないわね」
「あと俺が捻くれてるらしいから来れないんだと」
「それは納得ね」
あっさり納得されちゃったよ⋯⋯まあ、いいんだけど。
とにかくこの爆弾だけは全力で保護しなくてはならん。うっかり誤爆させようものなら今後の人生を左右してしまうだろう。解除していいのは真姫両親だけだ。マジで。
⋯⋯これ、後々変なフラグとかにならないよな?ならないですよね?ね?
すると、真姫は時計を確認してからそわそわしだした。
「じゃ、じゃあ仕方ないわね。八幡の元にサンタさんが来ないなら、私がなってあげるわよ」
真姫はカバンの中からそっと可愛らしい包みを取り出した。
「これ⋯⋯」
「クリスマスプレゼントよ」
「おお⋯⋯ありがとな。開けていいか?」
「どうぞ」
包みの紐を解き、ゆっくり取り出すと、黒い手袋が出てきた。
見た目の高級感もさることながら何というか⋯⋯めっちゃ防寒性能高そう。
「冬にライブやる時にはそれ着けてくれば指も動かしやすいと思うわ」
「あ、ああ、なるほどな。助かる。ありがとな」
手袋を見て瞬間にうっすら感づいた彼女の意図に口元を緩めながら、俺はちょうどいいタイミングと思い、カバンに手を突っ込んだ。