年が明けてから学校が始まり、もう一ヶ月が経とうとした頃、俺は電話越しに衝撃のニュースを聞かされた。
「活動、終了⋯⋯か」
「ええ。皆で話し合って決めたの。これがμ'sにとって一番にいい選択だって」
「⋯⋯そっか」
μ'sは三月になれば三年生組が音ノ木坂学院から卒業してしまう。当たり前にわかっていた話だが。それはμ'sにとっては大きな意味を持つものだった。
三人が音ノ木坂学院の生徒ではなくなること、もし在校生だけで続けるとしてもこれまでのグループじゃなくなること。そういった諸々を考えて、スクールアイドル・μ'sは幕を閉じることにした。
そこに疑問など挟む余地はなく、俺はただ彼女の言葉に頷いた。
「⋯⋯何つーか、あれだ。そう決めたんなら、残りの期間応援するわ。全力で」
「ふふっ、八幡から全力なんて言葉が聞けるなんて思わなかったわ」
「ああ、確かに『サボる』とか『眠る』とか『逃げる』以外に全力とかつけんの三年ぶりぐらいだな」
「リアルすぎて反応に困るからやめて。確かに想像つくわね」
「久々に使うぐらいμ'sにハマってるってことにしといてくれ」
「それもそうね。当日は会場に来れそう?」
「予定あっても無視するか潰すから大丈夫だ」
「さすがに生徒会長としてそれはどうかと思うけど⋯⋯でも、今回ばかりはそうして欲しいわね」
「まあ、その辺は心配すんな」
「そういえばそっちの生徒会は何かイベントやったりするの?」
「ん?ああ、一応バレンタインデーにチョコ作りのイベントやる予定にしてる」
「⋯⋯八幡のアイデアじゃなさそうね」
「当たり前だ。女子達の中で勝手に決まってたんだよ。で、先生の許可取ったり、日程やら開催場所やら決めたりやる羽目になった」
「そこは当たり前なのね⋯⋯ていうか、扱いが庶務というか雑用みたいになってない?」
「⋯⋯⋯⋯」
おお、考えまいとしていたことをずばりと言い当てられたわ。端から見てそうならきっとそうなんだろうな。できればふんぞり返ってハンコ押す役をやりたかったわ。無理か。
こちらの心情を察したのか、真姫が少し吹き出した。
「ふふっ、まあ活躍の場が多くて何よりじゃない。生徒会長さん」
「ああ、そうだな。お前も次の選挙で立候補してみたらどうだ?」
「⋯⋯考えとくわ」
意外と否定しなかった真姫は電話越しに楽しそうに笑ってる気がした。
「じゃあ、そろそろ寝るわ」
「ええ、おやすみ」
通話が途切れ、部屋に静寂が訪れる。
ただ会話の余韻は残っていて、電気を消してからも、しばらく響いていた。