捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

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All God's Chillun Got Rhythm #7

 夕方になると、西木野の家から迎えの車がやってきた。

 それを窓から見つけた西木野は立ち上がり、こちらに目を向けた。

 

「じゃあ、帰るわね」

「……一応、玄関まで見送る」

 

 何故頼まれてもいないのに自分から言い出したかはわからない。いや、まあ人としてのマナーが身に付いたという事にしておこう。

 玄関で彼女が靴を履いていると、小町がリビング出てきて、その後ろをカマクラがついてきた。こいつ……俺の時は見送りなんてしないのに。

 

「真姫さん、また来てくださいね!」

「ええ、またね」

 

 西木野が小町に手を振ると、カマクラが「にゃあ」と子猫だった時以来の可愛らしい鳴き声を上げた。おい、いつものふてくされた感じはどうした。

 西木野はその様子を見て、くすりと笑みを雫してから、こちらに視線だけ向けた。

 それに対して、俺は思いつくまま口を開いた。

 

「あー……それじゃあ」

 

 それを聞いた小町が、溜め息を吐き、肩を小突いてきた。

 

「それだけ?もっと他に言う事ないの?」

「まあ、比企谷さんらしいけどね。今日は手伝ってくれてありがと。助かったわ」

「……別に大した事はしてねえよ。てか、こっちも練習見てもらったしな」

「次会う時はもうちょっと上手くなってるといいわね」

「そっちもな」

「当然よ」

「うんうん二人が仲良しさんになってくれて小町も嬉しいよ」

「なっ……!?な、仲良しとか、別にそんなんじゃないんだから!」

 

 西木野がそっぽを向くと、今度は玄関の扉が開き、母ちゃんと西木野母が顔を見せた。

 

「ただいま~」

「お邪魔しま~す。真姫ちゃ~ん、迎えに来たわよ~」

「マ、ママ!?どうしてここに!?」

「ありゃ、お母さん。どったの」

 

 何故か同時に出てきたマザーズは、片方は気だるそうな、もう片方は優雅なリアクションを見せた。

 

「普通に帰ってきただけよ。それで、家の前に高級車停まってたから驚いたわよ」

「私は真姫ちゃんを迎えに来たのと、八幡君と小町ちゃんの顔を見に来たの♪」

 

 にっこり笑う西木野母からの名前呼びに、何ともいえない気分になりなっていると、西木野がこちらをジトっと睨んできた。

 

「またそのリアクション……」

「…………」

 

 俺は目を逸らし無言で誤魔化した。

 ……だって仕方ないじゃん?

 

 *******

 

 数日後……

 

「奉仕部?」

「……ああ」

 

 平日の夜、西木野から電話でアイカツについての相談を受けていると、最近学校で何かあったかを聞かれたので、部活に強制入部させられた話をした。

 すると、彼女は意外と食いついてきた

 そこまで面白い話ではないので食いつかなくてもいいんだが……と思いながら、奉仕部の名前を出すと、案の定西木野が首をかしげたのが電話越しに想像できた。

 

「何をする部活なの?ボランティア?」

「いや、そういうんじゃなくてだな……飢えた人に魚を与えるんじゃなくて、魚の取り方を教える……みたいな部活だ」

「……へえ」

「どした?」

 

 あの説明に対し、「イミワカンナイ」ではなく、感心するとか……なんて考えていると、西木野は話題を変えた。

 

「そういえば、ギターのほうは最近どうなの?」

「……まあ、ぼちぼちだ。つい出来心でアンプに繋いで弾いたら、小町と母ちゃんに怒られたけどな」

「……それは……御愁傷様……前も言ったけど、ウチの防音室使いに来れば?」

「いや、平日とかだと流石にな……つーか、その……そんな気軽に家に行くとかアレだし……」

「前に来たじゃない。何を…………って、バカ!そ、そんなんじゃないんだから!小町は私の友達なんだから、それで……あなたはそのお兄さんだから、別に問題ないっていうか……ああ、もう!なんでもないわよ!」

「お、おう…」

 

 最終的になんでもないに着地したのは気になるところではあるが、全力で気にしないでおいたほうがいいのはわかった。

 それに、俺に関していえば、この程度のことでラブコメに発展する可能性はないのである。むしろ出会って5秒でバトルするまである。しないけど

 ていうか、この前は小町についていったが、一人でわざわざ行くわけない、か……。 

 

 *******

 

「あら、八幡君いらっしゃ~い」

「……どうも」

 

 何故休日にギターを背負い、一人で西木野家を訪問しているのか、それには深い理由がある。

 先日、西木野家を訪問した時の事を母ちゃんが知り、お礼の品を持っていくように言われたのだ……さらに、一緒に行く予定だった小町が、急用の為行けなくなった。その急用が何かはわからずじまいだが……。 

 そんなこんなで、一人で西木野家を訪ねたわけだが……西木野母がにこやかに華やかな笑顔を見せるだけで、西木野はいない。あ、これはこのままUターンするやつですね……これで気まずい空気は……

 

「真姫ちゃ~ん、八幡君来たわよ~!」

「ちょっ!まだ準備できてないから待って!ていうか、早すぎ!」

 

 はて、この時間に来る事は事前に伝えてあるはずだが……むしろ1分足りともズレがなく来た事を褒めてもらいたい。

 

「それはむしろ印象悪い気がするわぁ」

「はい」

 

 今後は前後5分ずらそうと心に誓っていると、ぱたぱたと足音が近づいてきた。

 

「……どうも」

「…………」

 

 予想外の展開に、口をぱくぱくさせる事しかできない。

 西木野は、何故か着物姿だった。

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