捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

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All God's Chillun Got Rhythm #10

「はい。今日はここまで」

 

 先生の言葉とほぼ同時に、授業終了のチャイムが鳴り、教室内に弛緩した空気が流れ出す。

 私は教科書を仕舞い、窓の外に目を向けた。

 今日も気持ちいいぐらいの快晴。青く澄んだ空は、特に何もないのに、いつまでも見つめていられるくらい。

 高校生活が始まり、穏やかな時間を自分なりに過ごしていたけど、最近はそこに大きな変化が起こった。

 

「真姫ちゃーん!真姫ちゃーん!!」

「ちょっ……大声で名前呼ばないで!」

 

 クラスメートの……さらにはスクールアイドルグループ・μ'sのチームメイトでもある星空凛が、教室内に響き渡るような大声で私の名前を呼びながら、小走りで駆け寄ってきた。

 ちなみに、これが初めてではない。もうだいぶ繰り返されたやりとりに、周りのクラスメートはクスクスと笑っていた。ああ、もう!

 

「どうかしたにゃー?あっ、もしかして具合悪い?」

「違うわよ!毎回毎回大声で呼ぶのはやめてって言ってるの!」

「えっ……真姫ちゃん、もしかして凛のこと嫌いになった?」

「だ、だから、そういうんじゃなくて……」

「凛ちゃん。真姫ちゃんは、びっくりしちゃうから、もっと小さい声で呼んで欲しいんだよ」

 

 そう言って、やんわりと凛を窘めるのは、同じくクラスメート兼チームメイトの小泉花陽。凛とは小さい頃からの幼馴染みで、こうして凛を制御……できているかはわからないが、私の代わりに優しく言い聞かせてくれる。

 

「なんだぁ、真姫ちゃんに嫌われちゃったかと思ったにゃ~」

「べ、別にそんなことで嫌ったりしないわよ。それより、どうかしたの?」

「お話しに来ただけにゃ~」

「そ、そう……」

 

 いつもこんな感じだけど、この騒がしい日々も嫌いじゃない。

 すると、ポケットの中で携帯が震えだす。誰だろう?ママから?

 

「ちょっとごめん」

 

 二人に断り、確認すると、画面には『比企谷小町』と表示されていた。しかも画像付きらしい。家で猫を飼ってるから、その子の写真かしら。

 すると、画面には見覚えのある男子の後ろ姿が表示された。『ギターを弾く兄』なんて文章も添えられている。撮影されてるのには気づいているのかしら。

 まあ、何ていうか……あまり上手くない割には、様になってるのよね。あとこの前思ったんだけど、眉のひそめ方なんか、パパに似て……って、何考えてるのよ私は!比企谷さんがパパに似てるとか、そんなはずないじゃない!別に、全然かっこよくないし!

 そんな事を考えていたからだろうか。

 手に持っていた携帯が滑り落ち、机に転がる。

 そして、その画面を近くにいた二人に見られた。

 

「にゃ?……あ~っ!ま、真姫ちゃん、こ、この人……!」

「あわわわわ、男の人……!」

 

 そして、 

 まずい。

 やましいことは何もないはずなのに、何故か焦っている自分がいる。な、何か言わなきゃ……。

 

「そ、その人は……パパよ!」

「絶対ウソにゃー!後ろ姿でも似てないってわかるにゃー!」

「ま、ま、真姫ちゃんが、パパか……」

「ちょっ、花陽!何言おうとしてるの!?」

 

 この子は意外と耳年増なのかもしれない。 

 

「まさか真姫ちゃんに彼氏がいるなんて……意外にゃ」

「違うわよっ!ていうか意外って何よ、これでも結構モテるんだから!」

「え~、だって真姫ちゃん、『アンタみたいなのが私と釣り合うと思ってんの?』とか言いそうにゃ~」

「言わないわよっ、あとモノマネ似てない!」

「……なるほど」

「花陽も納得しないの!」

 

 すると、私達の会話が聞こえていたのか、クラスメートがわらわらと周囲に集まってきた。

 

「なになに?コイバナ?」

「西木野さん、彼氏いるの!?」

「へえ、どんな人?」

「絶対、爽やかな超絶イケメンに決まってるよ~」

「はあ……私、西木野さんの事狙ってたのに……」

「ちょっ……そんなんじゃないから!!そんな目で見ないで!あと人の話を聞いて!」

 

 結局、誤解を解いているうちに休み時間は終わってしまった。

 ああ、もう!比企谷さんのせいで! 

 そう考えながらも、それがただの八つ当たりなのは言うまでもなかった。 

 

 *******

 

「なぁ~んだぁ。誤解だったにゃ~」

「はあ……まったくもう、あなたのおかげでちょっとした騒ぎになったじゃない」

「あはは……ごめんね、真姫ちゃん」

 

 次の休み時間、改めて脱力する凛に思わず溜め息を吐いてしまう。疲れたのは私のほうなんだけど……。

 一方、花陽は謝りながらも、まだどこかそわそわしていた。まだ短い付き合いでもわかる。これは何か言いたいことがある時の顔だ。

 

「……花陽、どうかしたの?」

「あ、その……結局誰だったのかなって」

「……別に。ただの友達のお兄さんよ」

「「…………」」

 

 おかしい。

 ただの事実を言っただけなのに、言い訳がましく聞こえる。

 そして、目の前の二人の視線もそう言いたげだ。

 この時の私は何を考えていたのだろう。あとになってもよくわからないけど、つい口から言葉が出ていた。

 

「ああもうっ!そんなに疑うなら、今度会わせてあげるわよ!」

 

 

 

 

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