とりあえず、小町達の邪魔にならないようにひっそりとギターでも弾きますかね。アンプに繋がなければ大きな音は出ないし。
すると、こんこんと控えめなノック音が聞こえてきた。小町の奴、まだ何かあるのだろうか?
ドアを開けると、そこには西木野がいた。心なしか不機嫌そうに見える。
「なんでさっさと部屋に引っ込んじゃうのよ」
「いや、ほら……女子会に男混じっても仕方ねえだろ」
「別に女子会とかじゃないわよ。普通に話してるだけだし」
それを女子会というのでは?と思ったが、違いがよくわからないので黙っておこう。
西木野は呆れたように溜め息を吐いてから、俺の部屋に入ってきた。
……いや、まったく躊躇いがないのも、それはそれでどうなんですかね。
「戻らなくていいのか?」
「しばらくは大丈夫よ。ラーメンの話に夢中になってるから」
「そっか」
「…………」
「…………」
会話が途切れ、沈黙が訪れる。
……うわ、何これ。めっちゃ気まずいんですけど。てか、本当にこの子何しに来たの?
彼女は髪を指で弄びながら、俺の机をじっと見つめていた
そして、ぽつりと呟く。
「ちょっと見ていい?」
「ど、どうぞ……」
特に断る理由もないので首を縦に振ると、西木野は椅子に座り、机に置かれている本や、教科書類などをじっと見ている。何だ?何を探しているんだ?
一通り確認を終えたのか、今度はベッドに目をやる。
「ねえ……」
「?」
「あのベッドの下に……その……いやらしい本が沢山置いてあるのかしら」
「……いや、いきなり何言ってんの?」
「だってママが言ってたわ。男の人のベッドの下は勝手に漁っちゃいけないって」
「…………」
西木野母、娘に一体どんな知識を吹き込んだのだろうか?待て待て。それより今は……。
「お前、エロ本読みたいの?」
「ばっ……そ、そんなわけないでしょ!なんてこと聞くのよ、この変態!」
「ええぇ……」
どう考えてもそうとしか思えない流れじゃん。ねえ?
「まあ、どっちにしろ持ってない。残念だったな」
「だから違うって言ってるでしょ!?」
西木野が立ち上がり、こちらに詰め寄ってきた。のだが……
「きゃっ」
「っ!」
足をもつれさせたのか、西木野がこちらに倒れてきた。
こちらも一応受け止められたのだが、足元に落ちていた漫画のせいで、足を滑らせる。
結局、そのままベッドへと倒れ込んでしまった。
柔らかな重みが胸元を押し潰し、ほんの少し痛みが走る。
「ご、ごめんなさい!大丈夫!?」
「あ、ああ、一応……」
西木野は下敷きになっている俺を見て、慌てた表情になっている。いかん。無駄にテンパっているようだ。あと……めっちゃ顔近い!さらにいい匂い!
とにかく、一刻もはやく脱出を……。
「ひゃうっ!」
「っ!!」
え、何?何なの!?てか、今膝に何か柔らかい感触が……。
目の前の西木野は、ジロリとこちらを睨んでいる。やばい頭の中が混乱してきた。
さらに、それを後押しするかのように、ガチャッとドアが開いた。
「お兄ちゃ~ん、真姫さんは……ああ!?」
「はわわ……こ、これで恋人じゃないってことは、二人は既にふ、ふ、ふーふっ!?」
「にゃあ……、真姫ちゃん、大人だったんだにゃあ……」
「ちょっ、な、何いきなり入ってきて、わけのわからないこと言ってんのよ!?ほら、比企谷さんからも言ってやって!」
「いや、違う……俺は何もやってないはず……あれはたまたまで……」
「何であなたまで混乱してんのよ!イミワカンナイ!」
結局、皆が落ち着いて、事情を話して納得してもらうまで、1時間くらいかかった。