心地よい涼しさを感じながら読書に耽る春の夜。
やはり一人でどっぷり物語の世界に浸るのは心地いい。いや、学校でも大概一人でした。
すると、そんな静寂を破るように机の上で携帯が震え始めた。一体誰からだろうか。
……まあ、選択肢は限られすぎているが。
「……はい」
「も、もしもし……」
やはり西木野だった。いや、別に期待していたとかではなく単純に選択肢が少なすぎてわかりやすいだけだが。
「どした?」
「この前聞き忘れたことがあって……」
「?」
「ほら、あなた奉仕部に入れられたって言ってたけど、どんな理由だったの?」
「ああ……どうやら作文がお気に召さなかったらしい」
「作文?」
「ああ、じゃあな」
「ちょっ、何切ろうとしてんのよ!そこ詳しく話しなさいよ!」
「ええ……だってもう夜だし……」
「いや、比企谷さんはどの時間帯でも似たようなこと言うでしょ?」
「…………」
「ひ、否定はしないのね。別に減るものでもないから聞かせなさいよ」
「……まあ、別にいいけど」
何故そんなに聞きたいかはわからなかったが、確かに減るものでもないので話すことにした。
そして、予想どおりのリアクションが返ってきた。
「……ああ、なるほど。うん。まあ、その……いいんじゃない?」
「いや、絶対そんなこと思ってないよね?ドン引きしてますよね?」
「それ狙いで書いたって言ったほうが納得できるわ」
「……なんかそんな気がしてきたわ。つーか、これさえなけりゃあ部活なんぞやる必要がなかったんだが……」
「奉仕部ってことはボランティア活動でもしたの?ゴミ拾いとか……」
「いや、そういうのは……何つーか……クッキー作りを手伝ったくらいだが」
「……変わったボランティアね」
「魚の取り方を教えてただけだ」
「何それ」
「まあ、そういうことなんだが、てかこんな話でよかったのか?」
「……だって私の方は一応相談にのってもらったじゃない?だから、そっちが何か悩みがあるなら聞いてあげてもいいかなって思っただけよ」
「……お前、案外そういうとこ律儀だよな」
「別に。そのほうがフェアってだけよ」
「そっか…………あー、ありがとな」
「べ、別に!だからフェアなほうが好きなだけよ!何もないならいいわ、おやすみ!」
この時どういうわけか、照れて顔を真っ赤にしている西木野がはっきりと目に浮かんだ。
まあ、ある程度交流のある人間だから、そういうリアクションも自然と想像つくようになったのかもしれない。
すると、こんこんとドアをノックする音が聞こえてきた。
「どした?」
「お兄ちゃん、ちょっといい?って、どしたの?顔赤いけど……」
「……気のせいだろ。それよかなんか用か?」
自分でもよくわからない感覚で、少し早口になったが、とにかく小町の用件を引き出した。
当の小町は何やらわかった風な笑みでこちらを見ていた。
*******
「ま、まったくもう……いきなり素直にお礼なんて言わないでよ。びっくりするじゃない」
「ふふっ、真姫ちゃんったら青春してるわねえ」
「きゃっ!び、びっくりさせないでよママ……ていうか、いつからいたの!?」
「あ、明日は朝早いからもう寝ないと。真姫ちゃんも夜更かしは肌に悪いわよ」
「ちょっ、誤魔化さないでよ!ああもうっ!」