「……そろそろ帰るか」
「いや、このタイミングで何帰ろうとしてんのよ」
「ほら、さっき……」
「それ言わないで!ああ、もう!」
まあ、座敷わらしだしあまり気に……ごめん、やっぱ無理!今日眠れそうにないわ……。
いや、座敷わらしならむしろラッキーなことが……でも、変なのだったら……一応念仏を唱えておこう。宇宙天地輿我力量降伏群魔迎来曙光……。
「音ノ木坂、すげえな……」
「ちょっと、お化けの巣窟みたいに言わないでくれる?」
「……へいへい」
「気を取り直して、次は二年生の教室に行くわよ」
「了解」
二年生の教室は下の階にあり、こちらは二クラスある。
「どっちに行くんだ?」
「穂乃果達がやってるメイド喫茶よ」
まあこれも定番といえば定番だよな。これならさっきみたいなのは起こらないだろうし。
西木野もさっきの引きずっているのか、やや緊張した面持ちだが、深呼吸して、こちらに目を向けた。
「じゃあ入りましょ」
「……ああ」
「いらっしゃいませー!!」
「穂乃果、挨拶はそうではないと確認したはずです!」
「あ、そうだった!自分ちと勘違いしてた!えっと……おかえりなさいませ、ご主人様~!」
「「…………」」
やたらとハイテンションなメイドと、それを諌める羞恥心丸出しのメイドに、俺と西木野は顔を見合わせた。
「……あの、真姫……そちらの方は?」
「ああ、友達よ。今日は兄妹で来てくれたの」
「男性一人しかいないようですが」
「え?」
「あいつ……」
まったく必要のない気を遣ってからに……まあ、しばらくしたらまた顔を見せるだろう。いつかまたフラっとあらわれてくれ。
すると、テンションの高い方のメイドが、驚いた表情で西木野に話しかけた。
「ま、真姫ちゃん、もしかして、デートぉ!?」
「違うわよ!大きな声で言わないで!そんなわけないじゃない!」
「そうですよ、穂乃果。私達はまだ高校生です。男女交際なんてまだ早すぎます」
「そ、そうだよね!……そう、なのかなぁ?」
「「…………」」
さすがにそんなことはないと思うが。
たしかこの黒髪の女子が園田海未で、隣の賑やかなのが高坂穂乃果だ。PV見てたら、だいぶ覚えてきた。
いや、今はそれよりこの誤解を……じたばたする必要はないか。普通に考えて俺とこいつが恋人同士にみえるわけねえし。危うくしょうもない自滅をするところだったぜ。
そんな事を考えていると、奥からまた一人メイドが現れた。しかも、今度は一人だけ雰囲気が違う。何と言うか……まるで本物のメイドみたいだ。
つーか、あの人……南ことりだよな。これでμ'sの二年生組勢揃いか。
彼女は柔和な笑みを浮かべ、二人に声をかけた。
「二人とも、ご主人様をお席に案内しなきゃだめだよ」
「あ、そうだった!それじゃあこちらの席へどうぞ~♪」
「こ、こちらメニューになります……」
ようやく席に案内され、ひと息つくと高坂さんがこっそりとこちらにやってきて、顔を近づけてきた。
「ねえねえ、真姫ちゃんとはどういう関係なの?」
「え?あ、い、いや、知り合い、だけど……」
何この子、めっちゃ近いし、爽やかないい匂いがするんですけど!
「それは私も気になります。真姫とは健全な関係ということでよろしいのでしょうか?」
「え、あ、はい……」
この子も近いんですけど!緊張して思わず畏まっちゃったよ!あとこちらは控えめないい匂い!
「…………」
「っ!!」
いきなり脛に走る衝撃。
驚いて前を向くと、じ~っと西木野がこちらを見ていた。
「……どした?」
「別に」
え、何なの?何がどうしたの?
つーか……結局ここでも怖い思いするんじゃねえかよ。