捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

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Some Other Time #3

 占いのせいで変な空気になり、この気まずさをどうしたものかと思っていたが、西木野が時計を見て「あっ」と声を出した。

 

「もうこんな時間……行かなきゃ」

「そっか。……まあ、その、なんだ。応援くらいはしとく」

「ふふ、ありがと。今日は素直ね」

「いつも素直だと思うんだが……」

「はいはい、そういうことにしとくわ」

 

 つい目をそらしながら言ってしまったので、彼女の表情はよくわからなかったが、くすくすと笑う声が聞こえてきた。

 

「それじゃ、また後で」

「おう」

 

 西木野は、去り際にもう一度振り返ったが、特に何をするでもなく、また颯爽と早足でその場を後にした。

 俺は何となく手の甲を頬に当て、ライブ会場に向けて歩き始めた。

 ……こんなよくわからん場所で置いていかなくても。まあ、いいんだけどね。

 

 *******

 

 途中で小町を見つけたので軽く手を挙げると、こちらに向かって、とてとてと駆け寄ってきた。その顔はニヤニヤと笑みが貼り付いていて、でこぴんをしてやりたくなる。

 

「お兄ちゃん、どうだったー?」

「いや、いきなりどっか行くなよ。迷子になったかと思ったわ。不審者扱いされた時とか困るからそばにいてほしいんだが」

「そうなった時はもう声かけたくないなぁ」

「ひどい……」

「真姫さんはどうだったの?」

「ん?まあ、大丈夫だろ。多分」

「うわ、なんかテキトー。まあ、お兄ちゃんがそう言うなら大丈夫なのかな」

「…………」

 

 俺は太鼓判なぞ押せる立場にはないが、西木野はピアノのコンクールにも出ていたらしいし、舞台度胸なら持ち合わせているだろう。

 

「……むぅ、せっかく二人きりにしたのにあまり進展なかったみたいだなぁ。まあ、予想どおりだけどね」

 

 小町が一人でぶつぶつ何か呟いているが、とりあえずライブ会場に向けて、俺達は歩き始めた。

 

 *******

 

 体育館に入ると、想像以上に人が入っていて驚いた。

 あの三人だけのライブから、思っていたよりも順調に人気を獲得しているらしい。

 

「わあ……すごいね。本物のアイドルのライブみたい。真姫さんも可愛くウインクとかしちゃうのかな」

「…………」

 

 その想像は……うん、悪くないですね。実に悪くない。まあ同じボッチでも、スペックは違いすぎるからな。俺がウインクなぞしようものなら……おっといかん。自虐男子・比企谷くんが顔を出しかけてた。

 

「お兄ちゃん、一人で表情ころころ変えないで。気味悪いから」

「…………」

 

 うん、わかります。何となくそんな気がしてた。

 

 *******

 

 やがてライブが開演すると、体育館がまるで別世界のような空間に早変わりした。

 端から見れば、プロには到底及ばないレベルなのかもしれないが、それでも観客の目はパフォーマンスに惹き付けられていた。

 

「わぁ……」

 

 自然と声が零れた小町の隣で、俺の視線は自然と西木野に固定されていた。

 不意に目が合った気がしたが、まあ気のせいだろう。

 それにしても……どうしてあんなに眩しいのだろうか。

 何故こんなに気分が高揚するのだろうか。

 この感覚をどう表現していいのかわからないまま、輝きに満ちた時間はあっという間に過ぎていった。

 

「行こっか、お兄ちゃん」

「……ああ」

 

 小町に名前を呼ばれるまで、俺はライブが終わった後もステージを眺め続けていた

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