ハチマンは目の前が真っ白になった。
いや、こういう時は真っ暗になっただろ、とつっこまれるかもしれないが、今はどうでもいい。
マジで、誰だ?
「お、お兄ちゃん……このお姉ちゃん候補は誰?小町、きいてないんだけど」
小町も何が何だかわからないと言いたげな表情で何やら呟いている。
やばいやばい。これ、何かのドッキリ?その辺に誰か隠れてない?にしても、相手が俺では盛り上がりに欠けるだろう。こんな時までそんな考えなのが卑屈すぎる……!あとやわらかい、いい匂い。
すると、その女の人はおかしそうに吹き出した。
「あははっ、も~気づいてよ~」
「「え?」」
急に聞き覚えのある声になったその人は、俺と小町に向かってパチンとウインクした。
それを見た小町は「あっ」と何かに気づいた。
「もしかして、真姫さんのお母さんですか!?」
「当ったり~」
「…………」
マジか。女子大生かと思ったんだが……。
左肘に残る柔らかな感触にドギマギしながら、確認のためにもう一度よく見てみると、確かに西木野母だった。
普段より少し派手な服装とメイクだけで全然気づかないとは……女って怖い。
「何で変装なんてしてるんですか?」
「真姫ちゃんがね?まだ恥ずかしいからダメだって言うのよ。チケットはある筋から確保できたんだけど」
何だよ、ある筋って……セレブ過ぎて想像つかないんだが。最早セレブの本来の意味も忘れちゃいそうなんだが……。
「あぁ、それでわざわざ……」
「そうなの。でも、まさか二人が来てくれるなんて~。ありがとう」
「いえいえ、真姫さんのためなら父からお小遣い貰って北海道でも沖縄でも行きますよ~♪ね、お兄ちゃん?」
「…………」
さりげなく怖いこと言ってませんかね、この妹。まあ、親父なら自分の小遣い削ってでも工面しそうだが。ついでに俺の分も工面してくれると助かります。
「あらあら、本当に可愛いんだから。というわけで、今日はおばさんと一緒に見ましょう」
「いやいや、全然お姉さんでとおりますよ!」
「てか、さすがにバレるんじゃ……」
「大丈夫♪目立たないようにするから」
現在進行形で目立ってる気がするんですが、それはいいんですかね。道行く人々がチラチラこっち見てるんですが……。
「ちっ、ボッチが女二人も連れてんじゃねえよ」
おい、こら。誰だ今の。何で学校でボッチなの知ってんだよ。ここ秋葉原だぞ。
……まあいい。それより、いつまでもここにいてもしょうがない。
俺達はライブハウスに足を踏み入れた。
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「ふぅ……」
ピアノの演奏会と違い、まだアイドルのライブには慣れていないからか、どうも気持ちが落ち着かない。周りには悟られていないけど。
……そろそろ来てるのかしら。
「真姫ちゃん、真姫ちゃ~ん!!」
「お、大声で名前呼ばないで!どうしたのよ?」
「さっき比企谷さんを見たにゃ!」
「えっ?そ、そう?へえ」
「小町ちゃんととっても美人な女の人といたにゃ!」
「…………は?」