捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

4 / 141
 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


SWEET LORRAINE ♯4

「あなたは……」

「…………」

 何となく会釈を返す……が、肩を掴まれて至近距離で見つめ合ってやけに甘い香りが漂ってきてとにかく緊張して落ち着かない……。

 しかし、そんな思春期男子の心情を余所に、彼女の表情は訝しげなものに変わった。

「……どうも」

「あ、ああ……」

 セーフ。さすが俺。ここでうっかり勘違いして、笑顔を向けたりしてはいけない。そう、この前の出会いも今日の再会もただの偶然。変に期待するものではない。ここはさっさと立ち去るに……

「……じゃあ……」

「ちょ、ちょっと待って!まだ、あっ!」

 俺の肩に掴まっていた彼女はバランスを崩し、今度は背中に抱きつくかたちとなった。腰回りに細い腕が回され、顔が瞬時に熱くなる。

「ま、待ちなさいよ!転んじゃうじゃない!」

「ああ、悪い……」

 何でやたら上から目線なんだ、などという反論も出てこないくらい、この態勢はよくない。とにかくよくない。そりゃもう、程良い感じの柔らかさが背中にぎゅうぎゅう押しつけられ、脳天を突き抜けるような刺激を届けるくらいにはよくない。

「どうしよう……」

「……俺に聞かれてもな」

 どうしたものかと思い、キョロキョロと辺りを見回すと、俺がついてきていない事に気づいた小町が戻ってきた。

「お兄ちゃん、どしたの……あ」

 小町は俺達の様子を見て固まった。

「それじゃあ、ごゆっくり~!」

「「待って!!」」

 

 俺と謎の女子は適当なベンチに座り、小町が靴を買って戻ってくるのを待っていた。大した面識もない相手に、パシリみたいな真似をさせるのは彼女も気が進まないようだったが、我が妹の押しには勝てなかった。俺も行こうかと思ったが小町に叱られて、彼女の話し相手でもするようにと言われた。無論、二度目ましての赤の他人を満足させる会話術など持ち合わせていない。彼女に関してわかっていることは、見てくれの良さと人見知りっぽいところ。あとは、履いている靴が俺の靴の3倍の値段だということだ。彼女の身に纏った雰囲気もどこか垢抜けていて、うちの学校にいるロールスロイスで送り迎えされていたお嬢様を思い出す。

「「…………」」

 二人して行き交う人波を眺め、どちらも相手を特に気にするでもなく、店内のBGMや不規則に混じり合う足音に耳を傾けている。

 そうこうしている内に小町が戻ってきた。

「お待たせしました~!はい、靴とお釣りです!」

「あ、ありがとう」

「いえいえ!それよりまた会えるなんて!」

「そ、そうね……」

「この辺りに住んでるんですか?」

「違うわよ。今日はマ……親の用事で……」

 今、ママって言おうとしてたような……いや、ハウスルールに口を出すのは野暮ってもんだ。

 小町は彼女の様子などお構いなしに話を続ける。

「それにしても小町の知らない間にお兄ちゃんとずいぶん仲良くなったんですね~」

「ち、違うわよ!仲良くなんか……」

「またまた~、あんなにしっかり抱きついてたくせに~!」

「だから違うって言ってるじゃない!別にそんなんじゃないんだから!」

「あ、そうだ!私、比企谷小町って言うんですけど~、お姉さんの名前聞いてもいいですか?」

「話聞きなさいよ!って、名前?」

「これも何かのご縁ってことで~♪」

 彼女は躊躇うように、俺と小町に交互に視線を送り、小さな声で自分の名前を呟いた。

「……西木野、真姫」




 読んでくれた方々、ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。