「わぁ、結構お客さん入ってるんだね~」
「……文化祭の動画も話題になってたからな」
同じ学校の奴らが多いだろうが、小町と同年代くらいの女子もちらほら見かける。
西木野の作った曲聴きたい奴がたくさんいるということか。
そのことについ口元が緩みそうになるが、少し離れた所にいる派手な金髪の女子と目が合い、何とかこらえた。危ねえ、不審者と思われるとこだったぜ……!
つーか、よく見たら周り女子ばかりなんですけど!ステルスヒッキーを使ってもあまり効果はなさそうだ。
さらに、さっきの金髪女子はまだこっちを見ている。こりゃマジで警戒されてんな。
いや、待て。人はドラマチックに、悲観的に世界を見たがる性質があるという。ここは現実的に考えて……ああ、やっぱり警戒されてるわ。
怪訝な目を向けられることには慣れてるはずなのに、何故だろう。変な悪寒がするのは……。
そうこうしているうちに、開演前のアナウンスが響き、その数分後に明かりが消えた。
賑やかなイントロが始まり、いかにもライブの一曲目らしい曲が始まる。これはYouTubeでもよく聴くやつだ。
「真姫ちゃ~ん、頑張れ~!」
真姫ママさんは、変装していることを忘れているかのようにはしゃいでいる。まあ、この人混みならわかりはしないだろうが。
そこでふと気づいてしまった。
MCの途中途中で、西木野がこちらをジトーっとした目で見てくることに。
……何だ?気のせいか?その割にはMCの度に……。
普段なら自意識過剰だと自分を戒めるところだが、それとは違う気がしていた。あと嫌な予感がするのは何故だろうか。
とはいえ、パフォーマンスは凄まじい勢いがあり、ライブの世界観にいつしか引き込まれていた。
********
終演後、小町が「真姫さんに会いに行こうよ!」とはしゃいでいるが、さすがに男子が女子の楽屋に行くのは気が引ける。ラッキースケベ的な展開を期待する年頃はもう卒業したのだ。
「あ、真姫さんだ!」
「おお……」
まさかのタイミングで西木野がやってきたのだが、何というか……歩き方がいかついんですけど!まだアイドル衣装なの忘れてやしませんかね……。
「真姫さん、お疲れ様です!すごかったですよ~!」
「ええ、ありがとう」
小町に優しく微笑んだ西木野は、こちらを向くと、やや目を細めた。
「今日は来てくれてありがとう」
「あ、ああ……」
声がやや刺々しい。
俺は中学以来の地雷踏み抜きをやらかしたのだろうか。
すると、彼女は再び口を開いた。
「か、彼女はいいの?」
「…………は?」
「だから、彼女はいいのかって聞いてんの!」
「いや、誰だよ」
「えっと……綺麗なお姉さんと来てたって聞いたけど」
「「ああ……」」
つい小町と目を合わせて苦笑してしまう。
「どうかしたの?」
ちなみに、視界の端では西木野母がこっそり帰ろうとしている。どうやら逃げ遅れたようだ。西木野が予想よりはやく出てきたのもあるが。頑張れ、あと少しでドアに……あ、転んだ。
「え?」
西木野はそちらに目を向け……ぴたりと固まった。
「いたた……あら、真姫ちゃん。偶然ね~」
「「…………」」
俺と小町は何とも形容しがたい表情で二人を見守った。
「なっ……なっ……っ!!!」
この後、マイクを通した歌声よりもでかい西木野の声を聞いた。