「ふぅ……」
ベッドに寝転がり、天井を見上げた。
まだライブの熱が冷めやまないのか、頬が火照っている。
だが、それがライブの余韻だけではないことは自分が一番わかっていた。
「あぁ~~~もうっ」
何故自分はあんなことをしてしまったのか。いや、今さら問いただしたところで現実は変わらない。
まだ掌にはっきりと温もりや感触が残っている。
「次会った時、どんな顔すればいいのよ……」
その問いかけに誰が答えてくれるわけもなく、胸の高鳴りだけが頭の中を埋め尽くしていた。
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「…………」
「どしたの、お兄ちゃん。いつも以上に死んだ魚の目をして……」
「そ、そうか」
いつも以上に死んだ魚の目という謎すぎる例えにツッコもうにも、言葉が詰まり、上手く返せない。
理由は思い当たらない、わけではない。
先日のμ'sのライブの帰り。
あの一瞬が未だに焼き付いて離れない。
……いや、考えるな。
まあ、あれだ。からかっているだけなんだろう。お嬢様だし。
「お兄ちゃん、さっきから白米とにらめっこしてばっかだけど、はやく食べないと遅刻しちゃうよ?あと気味悪いよ」
「……おお」
気がつけばそれなりの時間が経っていた。
俺は慌てて朝食をかきこみ、家を出た。
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何とか授業に集中して、いつものペースをだいぶ取り戻したところで、奉仕部のほうも依頼が入り、忙しくなった。
依頼内容は川崎というクラスメートの女子生徒の調査だ。まあ調査といっても、最近帰りが遅い理由を確かめるだけなんだが……しかし……。
「……まさか、こんな所に来る羽目になるとは」
「あはは、だね。ちょっと緊張しちゃうかも」
目の前にある建物は、県内でも有数の高さを誇るホテルで宿泊費もそれなりに高い。もちろん泊まりに来たわけではない。
どうやらこのホテルのバーで川崎は働いてる可能性が高いからだ。
隣で苦笑する由比ヶ浜は、清楚だが高級感のあるドレスに身を包んでいる。見慣れない服装のせいか、何故か目のやり場に困ってしまう。ちなみにこれは雪ノ下の私物らしい。
雪ノ下のほうも黒のシックなドレスに身を包み、普段と違う雰囲気を身に纏っている。
「さ、そろそろ行きましょう。比企谷君、背筋を伸ばして。顎を引いて」
「お、おう……」
どうやら俺の普段の姿勢はこういう場には向いていないらしい。
残念の気分に浸りながらホテルに足を踏み入れると、そこにはまさかの人物がいた。
「…………」
「え?」
そこには、こちらも洒落たドレスに身を包んだ西木野がいた。