「へえ、9人に?」
「ええ。そろそろMVも完成するわ」
どうやらμ'sは先輩二人を加えて、9人で活動することになったらしい。まあ、ミューズは芸術を司る9人の女神らしいので、丸く収まった感はある。
「まあ、動画アップされたら見とくわ」
「ええ。すごくいいものになると思うわ」
「……だろうな」
この前小町にめちゃくちゃ機嫌話していたらしい。こいつがそんなに自信満々なら神曲確定なんだろう。
「それと、来週ウチに来ない?」
「……は?いやいや、いきなり家デートに誘うとか何考えてんの?ちょっと急すぎて頭が追いつかないんですけど……」
「ちょっ、何言ってんのよ!バカじゃないの!?もちろん小町も一緒よ!それに、もう何回か来てるでしょ!」
「お、おう……」
どうやら西木野嬢はこういう冗談がお嫌いらしい(知ってた)。
「別に構わんけど何かあるのか?」
「セッションしたい曲があるのよ。譜面はデータを送っておくから」
「……俺に拒否権はないのかよ」
「嫌なの?」
「いや、やる。ついていけるかはわからんが……」
「そんな難しいことはやらないわよ。私も最近覚えたばかりだし」
「お前、作曲やダンスやりながら、そんなのもできんのかよ」
「当たり前よ。私を誰だと思ってるのよ」
「……それもそうか」
照れくさくて口には出さないが、新曲をかなり楽しみにしている自分がいた。
それに、自然に会う約束をして、それを待ちわびている自分がいることに、つい口元が緩んでしまう。
「……ねえ、聞いてるの?」
「っ!ああ、悪い……ぼーっとしてた」
「はあ……そうだろうと思ったわ」
「すまん」
……いかん。何を考えているのだろうか、俺らしくもない。
恐らく今は鏡を見ないほうが良さそうだ。気持ち悪い笑みを浮かべていることだろう。
これで何度目になるかは忘れたが、改めて気を引き締め直して、西木野と週末の予定について話した。
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当日。
「むむむ……まだ二人きりの予定は……もうちょい押しが……」
「推しメンがどうかしたのか?」
「んーん、こっちの話こっちの話」
どうしたというのだろうか。もしかしてμ'sにドはまりしすぎて、推しが武道館行ったら死ぬようなテンションになっちゃってんの?
普段ならそのまま西木野邸へと向かうのだが、小町が買いたいものがあるのと、西木野もちょっとした用事があるらしく、駅前で待ち合わせすることにした。
「あ、真姫さん来た!」
「…………」
「お待たせ」
小走りに駆け寄ってくる西木野は、私服は初夏の装いで、季節の変わり目を改めて感じてしまう。
つい見すぎてしまったのか、西木野は戸惑いの表情をこちらに向けた。
「ど、どうかしたの?」
「……いや、何でも」
「…………そう。じゃ、行きましょ」
あれ、今なんか不機嫌にならなかったか?小町から足踏まれたし……。
すると、背後から声がかかった。
「あれ、八幡?」
「……は?」
俺は目を疑った。
そこには天使が……いや、戸塚が目を見開いてこちらを見ていた。