「いや、弾き語りとかしないからね?」
「冒頭から否定的なこと言わないの。ほら、比企谷さんの声って、よく聞いたら男性アイドルっぽく聞こえたり、ラップやってそうにも聞こえるから」
「いや、どんな声だよ。てか、最近一曲覚えたばかりなのに弾き語りとか……」
「まあ、そのうちでいいわ」
「…………」
あれ、なんかこの先の練習メニュー決まっちゃった?いや、まあ別にいいんだけど。
とりあえず、俺はアンプを借りて、復習がてら一曲弾いてみた。
「わあ、すごい!八幡、上手だね!」
「お、おう……」
二ヶ所くらい間違えたが、そこはご愛嬌で。西木野は間違いなく気づいてる目でこちらを見ているが……。
「新しい曲はもう弾けるの?」
「……少しだけ」
「じゃあ、そっちもお願い」
「……マジか」
「せっかく観てくれてる人もいるんだから。やってみましょう」
西木野の声がどこか弾んでいる。
その様子を見ていたら、とてもNOとはいえなかった。
まあ、この後の演奏はちょっと悲惨なものになってしまったが。
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「八幡って本当にすごいんだね。テニスもできて、ギターも弾けるなんて」
「いや、どっちも素人なんだが……さっきもミスりまくったし」
「兄は変なところで器用さを見せますからね~」
「テニス得意だったの?」
「いや、授業中誰とも組みたくないから一人で壁打ちしてるだけだ」
「…………」
「……お前は共感すると思ったんだが」
「だからボッチじゃないって言ってるでしょ!」
「そ、そうか……」
「そういえば皆はいつから友達なの?」
「今年春休みに運命の出会いを果たしたんですよ~♪」
「「運命とか言うな」」
「あははっ、八幡、学校の時とは違うよね」
「まあ、そりゃあな。休日だし……」
「文化祭とかでギター弾かないの?」
「絶対弾かない」
「即答したわね」
「これぞお兄ちゃんなんですよ」
何やら感心されてるようだが、そこは絶対に譲れない。特に理由とかないけど。なんか知らない人が弾き語りしてるとか思われるのは悲しすぎる。
「そっかぁ、見たかったんだけどなぁ」
「今見てるだろ」
「ふふっ、それもそうだね」
「また近いうちに人前でやる機会があるから、その時は来てください」
「うんっ、絶対行くよ」
そんな予定があったとは知らなかったが、戸塚が見に来るというのなら、少しは頑張ろうかと思えてくる。あれ、これって恋?違うか。違うな。
いつもより賑やかな休日。柄にもなく、いや、無理だと思ってても、こんな日が続けばいいとか考えてしまった。