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それでは今回もよろしくお願いします。
彼女は自分の名前を告げた後、一瞬こちらに視線を向け、あとは人混みに目を向けていた。こんな場所で自己紹介というのも、少し恥ずかしいのかもしれない。じゃあ、俺がするべき行動は……
「……じゃ、そろそろ行くか」
「はいはい、お兄ちゃん」
ですよね。
西木野に向き直り、それでも目は合わせられないまま、名前を告げる。
「……比企谷八幡だ」
「そう、よろしく……」
「あ、ああ……」
「……変わった、名前ね」
「よく……言われる」
たどたどしい会話……いや、会話とも呼べないようなやり取りを続けていると、小町がにぱっと可愛いオーラ全開の笑顔で割り込んでくる。この笑顔は十中八九何か企みのある笑顔だ。何をするつもりかは知らんが、可愛いからスルーで。
「真姫さんはまだ時間あるんですか?」
「え、私?まあ、なくはないけど……」
「じゃあ……」
「真姫ちゃ~ん」
小町の声に被せるように、西木野の名前を呼ぶ声が聞こえ、そちらに目をやると、思わず見とれてしまうような美人がこちらに駆け寄ってきた。
その女性は西木野の顔立ちを穏やかにしたような大人の落ち着きがあり、優しい眼差しには相手の負の感情を包み込むような包容力を感じる。髪は少し長めでウェーブがかかっていて、足を一歩踏み出す度にふわりと揺れ、甘いだけではない華やかな香りを振りまいているようだ。膝丈のスカートから伸びるしなやかな脚は、カモシカのような美脚という比喩がしっくりくるくらいにしなやかで、駆け寄ってくる様子を見ているだけで、その健康的な張りが窺える。
やがて彼女が近くまで来ると、予想していた通りの香りが鼻腔を優しくくすぐり、甘い誘惑に捕らえられたかのような錯覚を覚える。そして、優しい視線がこちらを向き、やわらかな微笑がこちらの視線を釘付けにした。
いかん。ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ見とれてしまった。別に『捻くれた少年と華麗なる人妻』が始まるわけではない。
彼女は目元にかかりそうな髪をかき分け、見た目通りの穏やかな声音で話しかけてきた。
「あら……真姫のお友達?」
「え?あ。いや……」
そう、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ緊張さしてしまい、何も言えないでいると、西木野が喋りだす。
「ヒールが折れたのを助けてもらったのよ。この二人に」
この二人に、をやけに強調した西木野は意外な事実を口にした。
「もう用事は終わったの?ママ……お母さん」
八幡は驚愕した。
……そういや、母親と来たって言ってましたね。
あと、ママって言ったのしっかり聞こえてるから隠す必要ねえぞ。
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