「お兄ちゃん、真姫さん達の水着姿楽しみだね~」
「冒頭からお前がそれを言うのかよ……」
まったく、この妹は……とでも言いたげな溜め息を吐きながら、俺は三人の水着姿を妄想……いや、思い浮かべてみた。何故言い直したかは自分でもわからん。
「プールって、学校以外で入るの久々だなぁ」
「まあ、学校以外だと入る機会はまずないからな」
「そ、そこまでは言わないけど……」
「お兄ちゃん、プールって言うのはね……」
「いや、プールの説明いらないから。学校ではちゃんと参加してるから」
二人一組になる必要がないからな。ボッチ的にはありがたい種目の一つだ。
そんな会話をしているうちに、ごつい高級車がこちらに向かってくるのが見えた。
「あれ、真姫さん……だよね」
「あ、ああ……」
「すごいね……この辺であんなの運転してるの雪ノ下さんの家くらいじゃない?」
車はまるでお手本をなぞるように緩やかなスピードで俺らの近くに停まり、中から3人が降りてきた。
「お待たせ」
「おはようにゃ!」
「お、おはようございます……」
三人が姿を見せると何故だろうか、マイナスイオンが発生して、少しだけ涼しくなった気がする。うわ、なんだこの機能。俺も欲しい。冷たい視線を浴びたことなら何度もあるが、あれは涼しい通り越して寒いからな……。
「じゃあ、さっそく行きましょうか!」
小町の号令に皆頷き、プールへと向かった。
********
更衣室、戸塚の着替えというドッキドキのイベントも密かに楽しみにしていたのだが、「そんなに見られちゃ恥ずかしいよ……」という可愛らしいクレームにより、俺はさっさと着替えて外で待つことにした。
「は、八幡、お待たせ」
「お、おう……来年も来ような」
「えっ、どうしたの?いきなり……」
戸塚は短パンにパーカーと、完全防御のフル装備だが、それがいい。もう可愛すぎで自分でも何考えてるかがわからん。
「お兄ちゃーん!戸塚さーん!」
一足先に着替えを終えたらしい小町が、とてとてとこちらへ駆け寄ってきた。よかった、一旦脳を正常に戻せる。
「ほらほら、どう?可愛い?可愛い?」
「うん、可愛いよ小町ちゃん!」
「ああ、世界一かわいい」
「棒読みのお兄ちゃんには後でお説教するとして、戸塚先輩、ありがとうございます!」
どうやら俺の褒め言葉はお気に召さなかったらしい。
まあ、あんまり誉めすぎても調子に乗るので、家で二人きりの時に誉めちぎるとしよう。
そんな兄妹の微笑ましいやりとりをニコニコしながら眺めていた戸塚が「あっ」と声をあげた。
……どうやら来たらしい。
俺は三回まばたきをして、ゆっくりとした動作で緊張など微塵もない……ふりをして、そちらに目を向けた。
「お、お待たせ……」