「「ふぅ……」」
粘り強く探した結果、やっと四人を見つけることができた。こいつら……暢気にウォータースライダー三周目に突入しやがって。
ちょうど昼時だったので、そのまま六人で昼食をとっていると、歩きまくったせいか、やけに焼きそばがうまく感じた。
「まったく……意味わかんない。いきなりいなくなるなんて……」
「すいません……」
「ご、ごめんね……」
「ごめんにゃー!」
「反省してないわね」
「あうっ、何で凛だけ~!?」
「反省してなさそうだからよ。後で覚悟しなさいよ」
「まだ何かあるにゃ~!?」
「…………」
口調の割にはそれほど怒っているようには見えない西木野を見ていると、彼女がこちらを見た。
「何?」
「……いや、意外だと思っただけだ」
「?」
「何つーか……もっと怒り狂うと思ったからな」
「怒り狂ったことなんかないわよ!それに……そんな悪い時間でもなかったわ」
「まあ、いい運動にはなったかもな。プールとか久々だし」
「……そうね」
彼女はぽつりと呟いて視線をそらした。何か物言いたげな間があったが、今は空腹を満たすことに集中した。
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着替えを終え、飲み物を買いに行った戸塚を見送り、一人でベンチに座っていると、先に着替えを終えたらしい西木野が出てきた。
彼女は特に何を言うでもなく、自然な感じで隣に腰を下ろした。
「……おう」
「思ったより疲れたわね。楽しかったけど……」
「お前、最後割とはしゃいでたからな」
「…………」
「?」
「お前って言うのやめない?」
「あ、ああ、悪い。西木野……」
「そういう意味じゃなくて」
「いや、どういう意味だよ」
「名前で呼んでって言ってるの」
「……いや、さすがに……」
「名前で呼んで。私も八幡って呼ぶから。なんかもう、名字で呼ぶのよそよそしくて嫌になったわ」
「…………」
どうやら拒否権はないらしい。てか顔近いんですけど!あとプール出たばかりなのに甘い香りが……。
それより、あんまり待たせると何を言われるかわかったもんじゃないので、俺はたった二文字の響きをゆっくり確かめるように、そっと彼女の名前を口にした。
「ま、真姫……」
「何よ……八幡」
「いや、そっちが名前で呼べって言ったんだが……」
「う、うるさいわね!揚げ足とらないでよ……バカ」
何だ、このくすぐったい気分……材木座の書いた小説を読んだ時とは違う形容しがたい何か……考えるのはやめたほうがいいかもしれん。
当の西木野……いや、真姫はそっぽを向いている。夏の暑さのせいだろうか、冷房の効いた場所なのに、耳が赤く見えてしまう。
そこで、さっきまでの水着姿やらを思い出してしまい、胸の鼓動がはやくなるのに気づいたところで、向こうから声をかけられた。
「おっまたせー!」
「にゃー!!!」
「お、お待たせしました」
「飲み物買ってきたよ」
真姫はそっぽを向いたまま立ち上がり、数歩進んでからこちらを振り返った。
「行くわよ、八幡」
「……おう…………」
口をもごもごさせながら立ち上がると、真姫は表情に呆れを滲ませていた。
「そこはそっちも名前を呼ぶ流れでしょ……バカ」
真姫の呟きが微かに聞こえたが、俺は首筋に手を当て、彼女らの後ろを黙って歩いた。
いつもと同じ位置を歩いているのに、いつもと何かが違って見えたのは気のせいじゃない……と思う。