曲を聴き終え、真姫の方を向くと、偶然彼女もこちらを向き、至近距離で目と目があった。
「「っ!!」」
二人して同じように肩が跳ね上がり、慌てて顔を背ける。
曲が遠く響く中、落ち着くのには数秒かかった。
横目で確認することすらせず、ただ前を向いていると、真姫のほうから口を開いた。
「ど、どうだった?」
「……退屈だったら眠ってる」
「もっと素直に褒めて」
「……よかった……すごく」
「……ん、ありがと」
そんなやりとりをしていると、次第に気持ちも落ち着いてきて、もう一度曲を聴きたくなってくる。
リピートしようとすると、次の曲に切り替わったのか、ピアノの音が聞こえてきた。
「あっ」
何かに気づいた真姫の声と共に旋律は途切れた。どうやらμ'sの曲とは違い、誰かに聞かせる予定のものではなかったらしい。あまり気にしないほうがいいやつだろう。
俺は聴かなかったふりをして、何か適当な話題をふることにした。
「……あー、昨日の夜何食べた?」
もっとマシな話題転換はなかったのか……まあ仕方ない。会話慣れしてないからな。
そんなくだらない言い訳を自分にしていると、真姫は口元に手を当て、首を傾げた。
「いきなり何?鯖の塩焼きだけど」
「なんか意外だな」
「何も意外じゃないわよ。多分変な想像してない?」
「変な想像はしてないが、まあ確かに偏見はあったかもしれない……」
無事に話題を変えたことにほっとしていると、再びμ'sの曲が耳元で流れ始めた。さっきよりはボリュームが絞られていた。
そして、それをBGMに真姫の声が聞こえてくる。
「そっちは何?」
「何がだ?」
「昨日の晩ごはんの話よ。流れでわかるでしょ?」
「お、おう……豚肉の生姜焼きだったな。あと味噌汁とか……」
「へえ、確か小町がよく炊事当番やってるのよね?」
「ああ、いつもありがたすぎて足向けて寝れん」
「八幡はやらないの?」
「小学生の時とかはほんのちょっとやってたが、最近は台所に立たせてもらえなくてな」
「……想像できるわ」
「できるのかよ……いや、事実だからいいんだけどさぁ……つーか、お前も立たないだろ」
「あまり立たないだけよ。こう見えても得意料理はパスタとグラタンなんだから」
そうなのか……。
「何だそのプロフィールを読み上げたようなやつ……あとパスタは湯でほぐしてから温めたソースかけるだけでグラタンは冷凍のじゃないか?」
「心の声と言おうと思ったことが逆になってるわよ!そんなに言うなら今から作るから待ってて!」
真姫はそう言って、防音室を飛び出していった。腕まくりをする後ろ姿が妙に新鮮だった。
……え、何この展開?いや、間違いなく俺のせいなんだけど。