「おお……」
しばらくしてから真姫に呼ばれ、西木野邸の家族団欒のためのテーブルに向かうと、そこには見た目も華やかな料理が並べられていた。
「……お前、ほんとすげえのな」
「当たり前でしょ?私を誰だと思ってんのよ」
真姫は得意げに胸を張るが……いや、まだわからん。
見た目はまともだが味が殺人級の料理を出すタイプのメシマズヒロインかもしれん。
だが、せっかく作ってくれたものだし、どんな味がしたとしても最後まで食いきる所存だ。しかも俺のせいっぽいからな。
俺は覚悟を決め、こんがりと焼けたグラタンの表面にスプーンを入れ、すくえるだけすくい、口に含んだ。
「ちょっと!いきなりそんな……」
「っ!?あっつ……!」
「あ、当たり前でしょ!?いきなりそんなかきこんで……はい、お水」
「……悪い、ふぅ……」
いかん。味の方に気を取られて、うっかりやらかしてしまった。自重せねば。
今度はしっかり味を確かめようと、ふーふー息を吹きかけ、冷ましてから、再び口に含んだ。
「……おおぉ、マジか。美味い」
「最初のマジかは余計だけど……ありがとう」
「いや、本当に。お前すげえな。料理はいつも雇われてるシェフが作ってると思ったわ」
「そういう日のほうが多いけど、それだけじゃないわよ」
「…………」
やっぱいるんじゃねえか。コック。
真姫は何でもないことのように言ってから続けた。
「たまにはこういうのもいいかなって……」
「家族とかμ'sのメンバーに?」
「μ'sの皆に作ったことはないわよ。そんな機会もないし」
「…………」
そうなると家族以外で真姫の手料理を初めて食ったのは……。
何の意味もない妄想に耽りそうになり、はっとしてグラタンの味に集中すると、真姫も何かに気づいたのか、慌てて口を開いた。
「そ、そういう意味じゃないから!ただ、タイミングがなかったというか……ああ、もう!はやく食べるわよ!」
食べるペースははやいが、上品さは少しも損なわれていない真姫の頬は、どこか赤く見えた。
それに気づいていないのか、ただ俺の気のせいなのか、真姫はそのまま話し続けた。
「そういえば、そっちは文化祭いつあるの?」
「9月だった気がするんだが……」
「何で曖昧なのよ……ああ、ごめんなさい」
「いや、何も言ってないのに謝らないで?なんか哀しくなってくるから……」
文化祭はある意味休日と言えなくもないのだ。こっそり帰れるし。
すると、真姫がぽつりと呟いた。
「……同じ学校だったら……のに」
「?」
「な、なんでもないわよっ。それより、はやく食べて練習しましょ!」
「……おう……」
最後の方、マジで聞き取れなかったんだが……まあいい。
それからはどちらも喋らず料理を平らげることに集中した。
だが、特に沈黙も苦にならなかった。