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それでは今回もよろしくお願いします。
西木野の母親は、こちらに向かって優雅な微笑みを見せ、ぺこりと頭を下げた。所作の一つ一つに気品があり、それでいて色気が漂い、通りすがりの男達の視線を惹きつけている。俺はうっかり呑まれないよう、明後日の方向を向いて、気持ちを落ち着けた。
「姉の西木野優妃です。よろしくね」
「もう、何ふざけてるのよ」
「ふふっ、わかったわよ。本当はこの子の母です」
「…………」
「わぁ~、めちゃくちゃ美人……」
茶目っ気たっぷりに微笑むその美人。あまりの貴婦人オーラに気圧されそうになるが、何とか堪える。
……とそこで、足を蹴られた。
「……お兄ちゃん、さっきからデレデレしすぎだよ」
「…………」
小町と西木野がこちらをジト目で見ている。
なんて事を言うの、この子は。
「い、いや、デレデレなんてしてねーし……」
明後日の方向を向いたまま否定すると、西木野の母親は気を悪くした風もなく、クスクスと笑う。
「ふふっ、娘と仲良くしてくれてありがとう♪この子ったら、人見知りで碌にお友達も連れてこないから、心配してたのよ」
「ちょっ……ママ!余計なこと言わないで!用が済んだなら早く行くわよ!」
母親の言葉に、顔を赤くした西木野は、その背中を押し、その場から立ち去ろうとする。
しかし、小町がまあまあと止めに入った。
「真姫さん。もしよければ、記念に連絡先交換しませんか?」
「う゛ぇええ!?な、何の記念よ……」
「あら、いいじゃない♪真姫ちゃんにお友達が増えた方がママも嬉しいわぁ」
「真姫さぁん……」
母親の笑顔とダメ押しの小町の上目遣いに、西木野は観念したように呻いた。
「わ、わかったわよ!交換すればいいんでしょ!!」
西木野が携帯をポケットから取り出すと、それと同時に小町が「あ~っ!」と叫びながら、頭を抱える。
「どうしよう……小町、携帯の電池が切れちゃった~。これじゃ交換できない~」
……さっきまで普通に使っていた気がするんだが、お兄ちゃんの気のせいだろうか。
すると、小町が目配せしてきた。妹の考えていることがわかりすぎてツラい。
「じゃあ、私の代わりに兄と交換してください」
「え……?」
「お、おい……」
小町の申し出に、二人して反応する。やっぱりこう来たか。
しかし西木野は、いきなり大して知り合いでもない男子との連絡先交換など、すんなり受け入れるタイプでもなさそうなのだが……。
だが、すぐに意外な反応が返ってきた。
「べ、別にそれでもいいけど……」
「……は?」
呆然としている俺に、彼女は何でもない感じで話を進めた。
「ほら、さっさと交換するわよ」
「あ、ああ……」
俺は西木野に携帯を差し出す。
「え?」
彼女は差し出された携帯をしばらく見つめた後、何故か自分の携帯を差し出してきた。
「いやいや、何で携帯そのものを交換してんの?」
小町のツッコミに合わせ、俺も内心「天然か!」とツッコんだが、これに関しては説明不足だったかもしれない。
「あー、あれだ。携帯の赤外線機能とかよくわからんから、代わりに頼む」
「そ、そうよね!もちろん気づいてたけど?」
「「「…………」」」
「……何よ」
それから彼女は、澱みのない手つきで番号を交換し、押しつけるように携帯を突っ返してくる。
「はい!言っとくけど、変な電話しないでよね!私はあなたと交換したわけじゃないんだから!」
「へいへい」
小町の策略により、連絡先交換なんてイベントが発生してしまったが、そんなことで勘違いして舞い上がる程めでたい精神構造はしていない。数々の構造改革を経て、甘い妄想はしても、甘い夢は見ないようにできているのだ。
「じゃ、じゃあ、ね」
「今晩連絡しますね~」
「…………」
俺は黙って会釈して、その背中を見送った。
彼女はしばらくして振り返ったが、多分小町を見ていたのだろう。
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