合宿二日目。私は曲作りと理由をつけて、自分の部屋のベッドに寝転がっていた。少し一人で色々考えたくなった。
μ'sの皆がいい人ばかりなのはわかっているけど、こういう時に我に返ったように一枚壁を作ってしまう自分がいる。これは完全に自分側の問題だ。
申し訳程度に鍵盤を鳴らしてみても、それはただの音の継ぎ接ぎで、とても音楽とはいえなかった。
……こういう時は……。
私は携帯にちらりと目をやってから、一旦休憩とばかりに寝転がった。
とりあえず、少し仮眠をとって頭をすっきりさせよう。
多分それでこのもやもやは晴れるだろうと思い、目を閉じると、携帯が震えだした。
……何よ、こんなタイミングで。
画面を確認すると、見慣れた名前が表示されていたので、とりあえず起きて、髪を整えてから、落ち着いて電話に出た。
「……もしもし」
「は?……あ、悪い。間違えた」
「…………はぁ?」
危うく「アンタ、バカァ?」とか言いそうになった。
今時間違い電話なんてなかなかないんじゃない?いや、八幡ならなくはないわね。電話機能を使う機会が少なそうだし……。
「……どした?なんか失礼な事を考えてそうなんだけど」
「大丈夫。ただの事実についてだから」
「じゃあ失礼じゃねえか。いやいいんだけどね……つーか、ああ、あれだ……」
「?」
「……なんかあったのか?」
「えっ」
「い、いや、気のせいならいい。忘れてくれると助かる。何となくそんな気がしただけだ……まあ、その……」
「……ありがと」
「…………」
「特に何があったとかじゃないのよ。ただ、自分の習性というか、そういうのが少し嫌になっただけだから」
「ああ、ボッチ慣れしてると自然と単独行動したくなるからな」
「ええ……そうかもしれないわね」
「今日はツッコまないのかよ……まあ、いいんじゃねえの?そこまで時間かけて考える関係性なら、それは本物だろ」
「本物……」
よく聞く言葉ではあるけれど、彼の口から聞くその言葉は、いつもと違う響きを持っていた。
それに釣られるように、私は口を開いた。
「ねえ、あなたにとって……いえ、何でもないわ。それより、ありがとう。そろそろ戻るわ」
「そっか。いきなり悪かったな」
「大丈夫よ。今度ブラックコーヒーでも奢ってあげる」
「マッ缶の方がいいが、タダなら何でも嬉しい。……じゃあ合宿頑張れよ」
「そっちもね。それじゃ」
通話を終え、心が軽くなるのを感じながら、私はゆっくりと立ち上がり、ドアの方へと向かった。足取りもはっきりと軽く感じる。
頭の中ではメロディーが確かに紡がれ始めていた。
少なくとも、音楽は私にとって本物なんだろう。