捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

61 / 141
Moment’s Notice

 

 合宿二日目。私は曲作りと理由をつけて、自分の部屋のベッドに寝転がっていた。少し一人で色々考えたくなった。

 μ'sの皆がいい人ばかりなのはわかっているけど、こういう時に我に返ったように一枚壁を作ってしまう自分がいる。これは完全に自分側の問題だ。

 申し訳程度に鍵盤を鳴らしてみても、それはただの音の継ぎ接ぎで、とても音楽とはいえなかった。

 ……こういう時は……。

 私は携帯にちらりと目をやってから、一旦休憩とばかりに寝転がった。

 とりあえず、少し仮眠をとって頭をすっきりさせよう。

 多分それでこのもやもやは晴れるだろうと思い、目を閉じると、携帯が震えだした。

 ……何よ、こんなタイミングで。

 画面を確認すると、見慣れた名前が表示されていたので、とりあえず起きて、髪を整えてから、落ち着いて電話に出た。

 

「……もしもし」

「は?……あ、悪い。間違えた」

「…………はぁ?」

 

 危うく「アンタ、バカァ?」とか言いそうになった。

 今時間違い電話なんてなかなかないんじゃない?いや、八幡ならなくはないわね。電話機能を使う機会が少なそうだし……。

 

「……どした?なんか失礼な事を考えてそうなんだけど」

「大丈夫。ただの事実についてだから」

「じゃあ失礼じゃねえか。いやいいんだけどね……つーか、ああ、あれだ……」

「?」

「……なんかあったのか?」

「えっ」

「い、いや、気のせいならいい。忘れてくれると助かる。何となくそんな気がしただけだ……まあ、その……」

「……ありがと」

「…………」

「特に何があったとかじゃないのよ。ただ、自分の習性というか、そういうのが少し嫌になっただけだから」 

「ああ、ボッチ慣れしてると自然と単独行動したくなるからな」

「ええ……そうかもしれないわね」

「今日はツッコまないのかよ……まあ、いいんじゃねえの?そこまで時間かけて考える関係性なら、それは本物だろ」

「本物……」

 

 よく聞く言葉ではあるけれど、彼の口から聞くその言葉は、いつもと違う響きを持っていた。

 それに釣られるように、私は口を開いた。

 

「ねえ、あなたにとって……いえ、何でもないわ。それより、ありがとう。そろそろ戻るわ」

「そっか。いきなり悪かったな」

「大丈夫よ。今度ブラックコーヒーでも奢ってあげる」

「マッ缶の方がいいが、タダなら何でも嬉しい。……じゃあ合宿頑張れよ」

「そっちもね。それじゃ」

 

 通話を終え、心が軽くなるのを感じながら、私はゆっくりと立ち上がり、ドアの方へと向かった。足取りもはっきりと軽く感じる。

 頭の中ではメロディーが確かに紡がれ始めていた。

 少なくとも、音楽は私にとって本物なんだろう。 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。