鶴見瑠美を取り巻く問題は解決こそしてないが、解消することはできた。まあ、周りに散々動いてもらったからこその結果なんだが。
胸の奥に微かにちらつく自分の感情か何なのかは見て見ぬふりを決め込んで、俺は由比ヶ浜達のはしゃぐ姿と彩り鮮やかに夜を照らす花火を見つめながら、ただ流れ行く時間を過ごしていた。
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「そう……」
次の日の夜は小町から電話があり、林間学校での問題で八幡が動いたことを聞かされた。
その内容は解決とかいえるものではなく、端から見れば八幡が……いえ、これ以上は考えないほうがいいわね。だって彼が自分で決めたことだもの。
でも何故だろう?
心の中には言いようのないもやもやと、柄にもない考えが浮かんできた。
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翌日、昼頃になってようやく千葉に到着すると、見慣れた街並みがいつもと違う。もちろんそんな気がするだけでいつもの千葉でしかないが。
この何かが変わるようで変わらない感覚を小さい頃から何度感じただろう。
「お兄ちゃん、どうかした?」
「……いや、何でもない」
「そう?いや〜、終わってみるとあっという間だね〜」
確かにそうだ。帰ってきたら帰ってきたで、雪ノ下は早々に雪ノ下姉に連れて帰られるし、平塚先生も用事があると学校へ戻った。
隣にいる戸塚は天使のように微笑み、小町の言葉に頷いている。
「そうだね。あっ、僕そろそろ行かないと。今日テニス部の練習があるんだ」
「えっ?彩ちゃん今から練習あるんだ?」
「うん。大会も近いから」
「そっかぁ。あっ、あたしもママと用事があるんだった!じゃ、もう行くね!バイバイ、ヒッキー!小町ちゃん!彩ちゃん!」
「おう」
「お疲れ様で〜す」
去っていく二人の背中を見送ってから、俺と小町も自然と帰途についた。
「お兄ちゃん、途中で買い物していこ」
「了解……ん?」
前方から見覚えのある高級車が近づいてくるのが見えた。
……あれは、まさか?いや、間違いない。
ナンバーを見て確信する。
小町も気づいたようで「あっ」と声を上げた。
その車は雪ノ下家に負けず劣らずの丁寧さで俺達の近くに停まり、ゆっくりと窓が開いた。
「あっ、真姫さん!」
「……合宿終わったばかりじゃ……」
「用事があったから来たのよ。そのついでというか……」
「そんなすぐわかるウソついちゃってぇ♪真姫ちゃんったら、合宿から帰ってくるなり……」
「ママ!!?そ、それは言わな……あっ……」
「うふふ、じゃあとりあえず二人とも乗って。家まで送るから」
こうして再びいきなり車に乗せられるのだった。
まあ、行き先が決まっているだけマシだが……。