捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

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Moment’s Notice #5

「それじゃあ、お邪魔しました」

「いえいえ、いつ来てくれてもいいんですよ〜♪何なら今度小町とお泊り会でも……」

 

 小町が最後の方だけぼそぼそ言いながら、真姫に満面の笑みを向ける。

 真姫も口元に笑みを浮かべながら、ひらひらと手を振って、こちらに向き直った。だが、視線は俺を捉えてはいない。斜め下のアスファルトに固定されていた。

 

「それじゃあ、また……ギターさぼらないようにね」

「……つまらなかったら、とっくにさぼってる」

「何それ。じゃあ大丈夫そうね」

 

 真姫はようやく目を合わせてから、数秒じっとこちらを見た。

 その真っ直ぐさに耐えられなくなり、今度はこっちが視線を逸らしてしまう。

 だが、何とか心を奮い立たせ、もう一度目を合わせると、真姫は微笑んだ。

 

「じゃあね」

「……ああ」

 

 車の中から真姫母がぶんぶん手を振ってくるので、それにこちらもひらひらと振り返すと車はゆっくりと動き始めた。

 真姫とは一度だけ目が合ったが、それだけで車は徐々に加速して、やがて見えなくなった。

 

「お兄ちゃん、いつまで見てるの?」

「ん?ああ、いや、別に……」

 

 暑さのせいか、俺は小町に声をかけられるまで、そこにぼーっと突っ立っていた。

 

 ********

 

 夏休みも終盤になると、ついついカレンダーを確認してしまう。おかしい……1ヶ月足りないんじゃなかろうか?いや、これ夢なんじゃね?てことは、もう一回寝たらちゃんとあと1ヶ月の休みが……。

 そんな俺の考えを嘲笑うかのように携帯が震えだした。

 画面を確認すると、すっかり見慣れた名前が表示されているので、すぐに通話を押した。

 

「……はい」

「だらけた声ね。大方夏休みが1ヶ月足りないとか言ってカレンダーを確認してたんじゃないの」

「えっ、何?お前、俺ん家に隠しカメラ仕掛けてんの?おっかないんだけど……」

「そんな無意味なことするわけないでしょ。何となく想像つくだけよ。それより今晩空いてる?」

「わかりきってることをわざわざ聞くな」

「それもそうね。今日花陽達と◯◯市にある花火大会に行くんだけど、小町と一緒に来ない?」

「……あー、ちょっと待ってろ」

 

 俺は小町に電話を代わり、近くで聞き耳をたてることにした。

 小町はにこやかに挨拶をしてから、何故か数回俺をジロリと睨み、真姫と話し終える頃には何やら謝っていた。

 

「ゴミいちゃんのバカ!ボケナス!八幡!」

「いや、八幡は悪口じゃねえだろ……」

「まったく……小町は受験勉強で時間が取れないから、お兄ちゃんが行ってきて。戸塚さんも行けそうなら一緒に。あとお土産お願い」

「お、おう……」

 

 何とも言えない気持ちになりながら、もう一度携帯を耳に当てると、真姫のため息が聞こえてきた。

 

「……何だよ」

「別に。じゃあ集合は17時だから。遅れないでね」

「了解」

「それじゃあ、またね」

「ああ」

 

 通話を終えると、小町が何か言いたそうにしていたが、「いやいや、焦るのはよくない……」とか呟き、自分の部屋へと戻っていった。

 ……受験勉強のことだよな。

 

 

 

 

 

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