花火大会当日。
待ち合わせに選んだ時計台の下でスマホを弄っていると、背後から戸塚が声をかけてきた。
「八幡、結構人多いけど西木野さん達わかるかなあ?」
「まあ、大丈夫だろ。ぱっと見ならそこそこ目立つだろうし」
すると、想像どおりに人目を引きつけながら、浴衣姿の三人組の女子がきょろきょろしながら駅から出てきた。
どよめくというほどではないけれど、近くを歩く人……特に男子がちらちらと彼女らを見ている。
その様子を声をかけるのを忘れて見ていると、真姫がこちらに気づき、小泉と星空を促して、こちらに歩いてきた。
「気づいてるなら声かけなさいよ」
「……い、いや、まあ、あれだ。人違いだったらどうしようかと……」
「わあ、3人ともかわいいね!」
戸塚の一言につい頷いてしまう。
3人それぞれμ'sでのメンバーカラーを基調とした浴衣を着ていた。さすがにμ'sと気づく奴はいないと思うが、この3人だけでアイドルグループと言われても納得してしまいそうだ。
ちなみに星空と小泉は戸塚のストレートな褒め言葉に照れ気味だ。
「にゃ、にゃあ……」
「あ、ありがとうございます……」
そして、戸塚は無邪気な天使の笑みでこちらを振り向いた。
「ね、八幡!」
「えっ?あ、ああ……いい、と思う。すごく……」
急にふられ、返答に窮したが、何とか感想を口にする。
「……ありがと」
今度は真姫が頬を染めて小さく唇を動かした。何故か星空と小泉はうんうんと頷いている。
「そろそろ行くか」
色々と誤魔化すように促すと、4人も頷いて、祭り会場の方へ足を向けた。
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「おい、見ろよアレ……」
「うわ、美少女が4人も……!」
「どんなハーレムだよ?」
「奴は前世でどんな徳を積んだというのか……」
「ちきしょうめ……」
「ザキ」
「ちっ、ボッチの癖に!」
冷たい視線にさらされることには慣れているつもりだったが、この手の冷たさは初めてだったので、ただ前を向いて歩くしかない。あと誰だ。魔法で消そうとしてる奴は。あと誰だ。俺がボッチだと知ってる奴は。そんなに名を轟かせた覚えはねえよ。
しかし、とうの本人達は何処吹く風で祭りの屋台をキョロキョロ見ている。戸塚がしれっと美少女枠に入ったのは……まあ仕方ないな。正式には天使だが。
「ねえ、八幡……」
「どした?」
「花陽達が見当たらないんだけど……」
「……はっ?」
いや、さっきまでそこにいたのに……なんかもう狙いすましたかのような早業だな。
真姫と目が合うと、呆れたような表情を浮かべ、はぐれないようにこちらへ一歩踏み出した。