花火から目を逸らせずにそのまま魅入られていると、いつの間にか結構な時間が経っていた。指先に伝わる彼女の手の感触は、意識しないとまるで溶けたように掌に馴染んでいた。
そのことを思い出し、斜め下に視線を向けると、真姫と目が合った。
「…………」
「…………」
距離が近すぎるせいなのか、どちらも目をそらすどころか、瞬きすらロクにできなかった。
やがて彼女の顔全体を眺める余裕ができると、真っ先に形のいい唇に目を奪われる。
花火か微かに照らし出すその桃色は、見ているだけで胸の鼓動を急かしてきた。
真姫はほんの少しだけ視線を花火の方に向けてから、再び視線を絡めてきた。
「……あの……」
「あっ、二人ともいたにゃあ!」
「「っ!!!」」
突然聞こえてきた大声。
名前を呼ばれたわけでもないのに、その声と特徴的な声ですぐに誰かわかってしまう。
……わざといなくなったわけじゃなかったのか。
真姫の方に目を向けると、逆の方を向いていて、どんな表情なのかわからない。かといって、あえて覗き見る勇気などあるわけもなく、そのまま二人して声のした方へ、人混みをかき分けるように歩いた。
自然と手は離れていたが、そこに馴染んだ感触は脳裏に焼き付いていて、まだはっきりと思い出せた。
さっきの声の主の星空をはじめとした三人組は予想どおり見つけやすかった。
「いやぁ、今回は本当にはぐれちゃったからびっくりだよ〜」
「今回は?」
「あっ!は、花火綺麗でしたよね、真姫さん!いや、もう本当に!」
「そ、そうね……」
勢いで捲し立てる小町に、真姫はやや引きながら頷いた。
「ご、ごめんなさい……人混みに巻き込まれて」
小泉が申し訳なさそうに頭を下げる。うん、この子は悪くない。この子に謝らせる社会が悪い。
そんな小泉の様子を見ながら、真姫はあたふたと口を開いた。
「ま、まあ、合流できてよかったわ。それより、もう花火大会も終わったからはやく帰りましょ」
「……だな」
「…………」
何故かそっぽを向かれてしまう。そして、俺も何故か彼女をあまり見れない。
「むむっ、何があったのかは知らないけど、これはこれでよかった」
何やらぼそぼそ呟いている小町を促し、ゆっくり足を進めると、さっきまでのあれこれがまるで夢だったように雲散霧消した。それでも確かなのはそれが決して夢ではなかったことだろう。
俺はもう一度、花火の名残りを確かめるように視線を上げた。
当たり前だが、そこにはただただ夜空が広がるだけだった。