「へえ、文化祭実行委員……らしくないわね」
「……俺もそう思う。てか、これ夢じゃねえの?」
「残念ながら現実よ。だから逃げたくなってるでしょ?」
「うぐぅ……」
「いや、何よその気味悪いリアクションは……」
「……気にすんな。それに一応ギターも触れてる」
「そう。じゃあ安心ね」
「あー、そっちはどうなんだ?その……文化祭とか」
「クラスでやることはまだ決まってないわ。でもμ'sとしてはライブをやるつもり」
「そっか」
「…………」
「…………」
沈黙が訪れる。
さっき真姫から電話がかかってきた時には、出だしは普通に会話できていたが、たまにこういう訪れた。
不思議でたまらないのは、それが特に気まずいとか思わない事だ。そして彼女もそう感じているという確信がもてた。
東京と千葉の夜の静かな音が受話器越しに混ざり合うのを感じていると、真姫が「あの……」と口を開いた。
「八幡は……その……」
「?」
「……いえ、やっぱ何でもないわ」
「そ、そうか……じゃあ、そろそろ寝るわ」
「ええ、おやすみなさい」
お互いに通話を終える時はすぐにどちらかが切るのだが、その日は数秒の沈黙があった。
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やばい。
何がやばいって、そんな感想しか出てこないくらい語彙力死んでるのがやばい。
仕事が終わらねえ……えっ、何?今俺社畜の予習してんの?
文化祭の準備の方はかなりまずい状況になっていた。
雪ノ下に作業の負担がかなりかかっているのと、実行委員がその機能を果たしてなく、事務作業は貯まる一方だった。
俺、文化祭の実行委員やってるんだよな?と疑問に思っても、誰が責められようか。
とはいえ、何を考えたところで、頭を働かせ、指を動かさなければ仕事は終わらないという逃げたくなる現実。真姫の言うとおりじゃねえか。
風呂上がりに色々考えながらも、結局俺はギターを抱えてベッドに腰かけていた。
疲れてる時まで律儀に……と思いかけたが、すぐにそういうのとは違うと気づいた。
最早俺にとってはこの時間も居心地がよくなってしまっているのだ。
一人で弾いている時はもちろん、彼女の前で演奏している時も……。
「……ちゃんと覚えないと何言われるかわからんからな」
言い訳めいた事を口にしながら、俺はしばらく指を動かした。
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「真姫ちゃん、この新曲すごくいいよ!!」
「文化祭もこれでさらに盛り上がりそうね」
新曲を皆の前で弾き語ってみると、良い評価をもらえ、自然と笑みが零れる。メンバーの瞳の輝きが、お世辞とかで言ってるわけじゃないと教えてくれるからだろう。
μ'sは時間を忘れて練習に打ち込んでいた。
その合間に携帯が震えているのに気づいた。ママからかしら?
遅くなるから返信しとかないと……。
「……えっ?」
メールを見た私は驚きのあまり声が漏れた。