捻くれた少年とツンデレな少女   作:ローリング・ビートル

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Dolphin dance

「ふぅ…………」

 

 溜息を一つこぼすと、その音がやけに大きく響いて、部屋が無音なのに気づいた。

 私はリモコンを操作して、いつものクラシックを流した。こういう時は耳に馴染んだ音楽のほうがいい。

 連絡は戸塚さんからだった。

 どうやら八幡が……というか文化祭実行委員で色々と問題が起こっているらしい。そして、この前の林間学校のみたいな事をやっているとか……。

 その場にいたわけでもないし、学校で彼の周りにいる人の事なんて殆ど知らないけれど、何故か色んな場面がはっきりとした輪郭をもって浮かんできた。

 そして、その場面を俯瞰で見ながら、釈然としないのに何もできない自分をまで浮かんできて、もやもやとしてくる。

 時計を確認すると11時を過ぎていた。いつもならもう寝てる時間だし、誰かに電話をかけるなんて非常識な気もする。相手が疲れているならなおさらだ。

 それでも指は自然と動いていた。

 もう寝ているかと思ったが、彼はすぐに出てくれた。

 

「……もしもし?」

「……おう」

「えっと……ごめん。こんな遅くに……」

「いや、別に構わんけど……」 

「あの……暑い日が続くわね」

「は?ま、まあ、確かに……」

 

 私は何を言っているのだろう?

 つい自分の頭をはたきたくなった。普段ならこんなミスしないはずなのに。

 ……いえ、ミスも何も、そもそも何が正解かわからないわね。何故電話したのか自分でもわからない状態だし……。

 

「あー、まあ、あれだ。陽が沈むのが早くなっただけマシじゃないか?」

「そ、そうね……夜は涼しいかも」

「…………」

「…………」

 

 沈黙。

 これって八幡に気を遣わせてないかしら?

 あまり器用に喋れるタイプじゃないというのは自覚があるけれど、これはさすがに自分が嫌になる。

 

「……ありがとな」

「えっ?」

「いや、ちょうど……誰かの声が聞きたかったっつーか……まあ、いい気分転換になった」

「……あなたも人の声が聞きたくなることがあるのね」

「ばっか、お前。もし家に帰って小町とカマクラがいなかったら、寂しくて死ぬ自信がある」

「大げさね。でも八幡らしいかも」

「まあ、ボッチ同士何か察するもんはあるだろ」

「ボッチじゃないって言ってるでしょ?……今はあなたも」

「ん?」

「ふふっ、何でもないわ。こんな時間にごめん。おやすみなさい」

「お、おう……おやすみ」

 

 通話を終えると、何だか自分が励まされた気分になっている。ああ、私ったらもう…………文化祭には絶対行こう。

 そして、労いの言葉くらいは……ね。

 

 

 

 

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