あっという間に総部高校の文化祭の日はやってきた。
穏やかな青空にほっとしながら、私は花陽と凛と駅で合流し、千葉に向かった。
そして、千葉に着くと、小町が迎えに来てくれていた。
「あっ、こっちですよ〜♪」
「小町ちゃん、おっはようにゃ〜!」
「おはよう、小町ちゃん」
「おはよう」
「おはようございます〜!ささ、兄も多分待ちわびていると思うので行きましょう♪」
「もし遭遇したら眉しかめてそうね」
「あはは、なんか想像つくにゃ〜」
「う、うん、たしかに……」
「兄の生態を知りながらもこのリアクション……いける」
道の端っこを歩きながら、謎のガッツポーズをしている小町に苦笑すると、ふわりと少し強めの風が吹く。
先日の話もあるからか、そんな些細な出来事でさえ、何かを暗示してるような疑心暗鬼に駆られた。
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「「あっ……」」
いきなりの遭遇。
向こうも予想外すぎたのか、私じゃない誰かを見ているような目をこちらに向けていた。
「ちゃんと仕事してるみたいね」
「まあ逃げ場がないからな。そっちは文化祭の準備とか大丈夫なのか?」
「そっちに比べたらまだ日にちに余裕があるから問題ないわ」
「そっか」
「……誰かと回る予定とかあったりするの?」
「わかりきったことを聞くな」
「それもそうね。……ねえ……」
「?」
「じ、時間があったら、案内してくれない?ほら、男子がいたほうがナンパ除けにもなるし」
「……あー、わかった。あまり時間は取れんかもしれんが……」
「ええ。あっ、それと……これ……」
私が駅の自販機で買っておいたMAXコーヒーを手渡すと、八幡の口元が緩んだ。
「ありがとな。助かる」
彼は照れくさそうにお礼を言いながら、 ポケットから財布を出そうとしていた。
「別にいいわよ」
「いや、そういうわけにはいかん。俺は養われる気はあっても施しを受ける気はない」
「ど、どんなプライドよ!じゃあ、こうしましょう。MAXコーヒーをあげるから絶対に後で案内して」
「……そういうことなら、わかった。後で連絡する」
「ええ、お願いね。それじゃあ、仕事頑張って」
そう言って渋々納得した八幡の目をしっかり見た後、何故か離れた場所からこちらを見ている小町達の元へ戻った。
まったく、コーヒー一つ渡すだけでも面倒くさいんだから……まあ、その考え方は別に嫌いじゃないけど。いや、今そこはどうでもいいのよ。
振り返ると、彼はもういなくなっていた。
「……頑張って」
私はポケットの中にある自分用に買ったMAXコーヒーをぎゅっと握りしめた。