ここに来て想定外の問題が発生した。
相模南がいなくなってしまった。
おそらく開会式のミスを引きずって……いや、その前から積もり積もったものがあった。さっきのミスでそれが爆発してしまったというべきだろう。
とにかく今はそこはどうでもいい。問題は相模が地域賞等の結果が書かれた紙を持っていってしまったということだ。
それに……雪ノ下が受けた奉仕部の依頼の件もある。
時計に目をやると、探すには余裕のある時間だが、休憩を取るのは無理そうだ。
……しゃあねえか。まあ、社畜になったらよくあることなのは親父や母ちゃんを見てればわかる。
俺は真姫に謝罪メールを送り、相模を探し始めた。
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「……そっか」
八幡から送られてきたメールを確認すると、自然と声が漏れ出た。さっき会った時も忙しそうにしてたものね。
「お兄ちゃんから何か連絡あったんですか?」
「比企谷先輩から何か連絡あったにゃ?」
「ひ、比企谷先輩がどうかしたの?」
何故この3人は当たり前のように八幡からのメールだとわかったのかしら?もしかして私ってそんなに友達少ないイメージ?端から見たらボッチ?いや、今は皆と行動してるし……。
思考が別の方向へ逸れそうになったけど、気を取り直して小町達に目を向けた。
「何でもないわ。行きましょ」
私はいつものテンションを心がけた。
それが既に自分がいつもどおりではないというのを知りながら。
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「あの、真姫さん」
「?」
「兄がどうかしたんですか?」
4人で次の売店へ向かう道すがら、小町がおずおずと訊ねてきた。口調はおどけた風でも、心配しているのが隠しきれていないところがかわいい。
私はなるべく優しい声音を心がけた。
「大丈夫よ。仕事は忙しいみたいだけど、それだけ頼りにされてるって事じゃない?逆に遊び呆けてるほうが心配だわ」
「確かに!でも、兄が遊び呆けるような相手も場所もここには見当たらなかったのでそっちも大丈夫です!」
「…………」
変な信頼されてるわね。それはそれでどうなのかしら?まあ、ギターの練習サボらない理由にはなってるかもしれないけど。
どっちにしろ、一緒に回る時間がなくなったなら、その分楽しむのが彼への礼儀だと思う。
『わかった。 頑張って』
何か色々書こうとして書けなくて、不自然な間が空いた短い文を送ってしまったけれど、今はこれ以上思いつかなかった。
……後で会えるといいんだけど。
そう考える胸の内には嫌な予感みたいなのがちらついていた。