「……ふぅ……」
つい溜め息が零れてしまう。何がそうさせるのかはわからない……なんてことはないわね。
ただ、この嫌な予感にも似た胸騒ぎは、八幡が来れなくなっただけではないと思う。
「ごめん。ちょっと外の風に当たってくるわね」
「にゃ?」
「真姫ちゃん?」
「どうかしたんですか?」
「大丈夫よ。すぐに合流するから。先に行ってて」
そう言い残して、返事も聞かずに私は階段を降りていった。
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外へ出てみたものの、外の空気はまだ気持ちの良い温度とは言えないので、あまり気が晴れることもなかった。
玄関から校門に伸びる道に沿って並ぶ出店は、まだ盛り上がっていて、漂ってくる食べ物の匂いが祭りの雰囲気を濃くしている。
さてどうしたものだろう?すぐに凛達の元に帰るのも何か気まずいし、八幡がどこにいるかはわからないし……あっ。
一つ行ってみたい場所があるのを思い出した。
私はさっき小町から聞いた話を思い出しながら、その方向へと足を進めた。
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校舎裏にある駐輪場の近く、いかにも座るのに都合良さそうな小さな階段がある。おまけに人もそんなに来なさそうなのも八幡らしいというか……。
さすがにここは出店などないので、祭りの賑わいからはかけ離れた静けさを保っている。微かに聞こえてくる音のせいで、この場所が周りから切り取られているように思えた。
階段に腰を下ろすと日差しをずっと浴びていたコンクリートは少し熱く感じる。
目の前にある光景は音ノ木坂でも見れそうなくらいありふれたものだった。
自転車置き場に並べられた自転車見てみると、倒れているのがいくつかあった。急いで停めたのだろうか。それとも風に倒されたのだろうか。
親切心とかではなく、自然と体が動き、私は自転車を一台一台起こし始めていた。
幸い引っかかってはなかったので、その作業はすぐに終わる。
これでよし。案外この中に八幡の自転車があったりして……。
「……真姫……?」
「え?」
いきなり名前を呼ばれたので振り向くと、そこにはさっきよりも疲れ気味の顔をした八幡がいた。
「は、八幡?なんでここに……」
「ちょっと人探しをしてたんだが……てか、そっちは何やってたんだ?それ、俺の自転車なんだが」
「え?」
まさかすぎる展開に、私は言い訳を考えながらも、その顔が見れたことにほっとしている自分がいる。
八幡もまさか私がここにいるとは思わなかったようで、目をぱちくりさせていた。
「……やっぱボッチだから……」
「違うわよ!」