「それより、大丈夫なの?ていうか、文化祭で人探しって何なの?」
「あー、まあ、あれだ……色々あんだよ」
「……ふーん」
つい責めるような口調と目つきになってしまうことに申し訳ない気分にもなったが、少しモヤモヤしているのも事実だった。何でかしらね。
八幡は何を言おうか迷っているのか、視線を向こうに逸らしている。
このまま沈黙が続くのは嫌だったので、私は思いついたことをそのまま口にした。
「まあ、でもそのうち見つかるんじゃない?さっき屋上への階段昇ってる人もいたし」
「は?いや、屋上は立ち入り禁止なんだが……」
「本当よ。確かに見たもの。ショートカットの女の子が……」
「っ!助かった!」
「はぁ?あっ、ちょっ……!」
突然走り出した八幡の背中はすぐに見えなくなってしまった。
ただあのリアクションを見る限り、さっき見かけた人が探している当人だったのだろう。
……見つかったならよかった。
この時私は何を考えていたのだろう。
八幡が向かった方向へと、私は小走りで足を進めていた。
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屋上への階段を昇りきると、机と椅子を積んだ形だけのバリケードが設置してあった。
そして、そこは既に誰かが通過したあとがあった。
自分もそこを通り、扉の前に立つと、微かに声が漏れ聞こえてきた。
本来なら聞くべきではないし、盗み聞きなんて趣味が悪いと思ったが、ついそのままそこに立ち尽くしてしまった。
そこから聞こえてくるのは八幡と女の子の声。
会話内容の細かい部分まではわかりづらいけど、剣呑な雰囲気だけはひしひしと伝わってくる。あまり仲は良くないみたい。
「だったら結果だけ持っていけばいいじゃない!」
女の子の声を荒げ、さらにピリついた空気が伝わってくる。
ドアノブに手を伸ばそうとすると、背後から足音が聞こえてきて、私はすぐに物陰に隠れた。
見つからないようにこっそりと足音の主を窺うと、一人の男子に二人の女子が後をついてきていた。
「葉山君、お願い」
「大丈夫。皆で説得すれば相模さんもわかってくれるはずだよ」
どうやら女子二人が人望のある男子をつれて来てくれたらしい、とりあえずこれで解決してくれるといいんだけど……おそらく今八幡と話している子は八幡の話を聞かない。
幸い扉が何かに引っかかったように閉まらず、隙間が空いていたので、そこに近づいてみた。
だが、やりとりを聞いていても、話があまり進んでいる様子はない。時間大丈夫かしら?すると……
「はぁ〜あ……」
八幡の気だるげな溜め息がすべてのやりとりを中断した。