真姫と別れてから、閉会式や後片付けを終え、奉仕部に顔を出し、学校を出る頃にはだいぶ空も暗くなっていた。
校門に辿り着くまでにいくつかの冷たい視線を頂戴したが、今は体の疲れのおかげで大して気にもならなかった。まあ、明日からも大して気にならんだろう。それより……
「お疲れ様」
「……は?」
いきなり横から声をかけられ、視線をその方向にやると、真姫がそこにいた。後方には小町と小泉と星空がいる。
「お前ら、何で……」
「迎えが来てくれるまで時間があるから、ここで待ってたのよ」
「お、お疲れ様です」
「比企谷先輩お疲れにゃ〜」
「お兄ちゃん。なんで、そんなぽかんとした表情なの?暗いから余計に目が腐って見えるよ?」
「……いや、てっきりもう解散して帰ったのかと」
「真姫ちゃんがね〜、比企谷先輩にお礼言ってから帰りたいって……」
「り・ん?」
「い、いひゃいにゃ〜!」
「あはは……」
「凛さん、ダメですよ。真姫さんはツンデレだから先に言っちゃったら余計に言いにくくなるんですから」
「誰がツンデレよ!まったく……それで、大丈夫だったの?」
真っ直ぐ向けられた瞳に、やましいところなど何もないのにたじろいでしまう。薄暗い夕方の中でも、彼女の瞳はやけにはっきりと見えた。
「普通に閉会式も終わったし、後片付けも何もトラブルはなく終わった」
「…………」
真姫は「そういうことじゃないんだけど……」と言いたげな目をしているが、今はそれに気づかないふりをした。
彼女がそれを察したのかは定かではないが、数秒目を伏してから、再び視線をこちらに据えた。
「ならよかったわ。今日は誘ってくれてありがとう」
「あ、ありがとうございます……」
「ありがとにゃー!」
「ありがと。お兄ちゃんのおかげで真姫さん達と文化祭回れて楽しかったよ」
最後のマイシスターの発言は文化祭実行委員としての仕事の評価とは違う気がするが、まあかわいいからよしとしよう。
どんな感じになってるかわからないが、我ながら不器用な笑みを返すと、真姫がマッ缶を手渡してきた。
「いくらだ?とか言わないでね」
「……ありがとう。買って帰るか悩んでたとこだったから助かる。それと……」
「?」
「いや、これは、まあ、後でメールでもするわ」
「そう?わかったわ」
「…………」
「…………」
何故かお互い黙ったまま視線を交錯させる。
屋上で触れ合った肩の感触がはっきり蘇ってきた。
この後何を喋ったのかはあまり思い出せないが、その優しい感触だけは翌朝になってもしっかりと覚えていた。