「…………」
文化祭の翌日。私は昨晩八幡から送られてきたメールをもう一度読み直していた。もう一度、と言いながらもこれで何回確認しただろうか?
『来週、時間が欲しい』
特に捻りのない、というか簡潔すぎて会いたい以外何を言いたいのかわからない文章。でも八幡のことだから、この文章を書くだけでもしばらく考えたのだろう。その様子を想像したら、つい頬が緩んでしまった。
……気をつけなきゃね。今のをママに見られたら、絶対にからかわれる。
ちなみに私もごく短い文章しか打てなかった。
『わかった』
我ながらなんて可愛げのない文章だろう。こういう時はどんな文章を書くのが正解なんだろう?
普段はそんな事気にしないのに、自分の気持ちに気づいてしまったら、必要以上にあれこれ考えてしまう。
……とりあえずピアノでも弾くしかないわね。曲も作らなきゃだし。
しかし、その日出来上がったのはただの音と音の繋ぎ合わせでしかなかった。
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リビングのソファに寝転がりながら、真姫に送った文章をもう一度読み返してみる。
……何だこれ。しかも来週だけじゃ何曜日かわからねえだろ。しかもカッコつけてる感があるというか、気障ったらしいというか……ああ、死にたい。久々にめっちゃ死にたい……。
「どしたの、女子にイタいメールを送って、しばらくは自分カッコいいと思ってたけど、反応なくて冷静になったら、めっちゃイタい文章なのに気づいて死にたくなってる時みたいなテンションになってるよ」
「長文の説明御苦労。でもお兄ちゃんの古傷を抉るのはやめてね」
「いや、今テキトーに言っただけなんだけど……そんなのやらかしてたの?」
「…………」
うぐぅ……と呟きたい気持ちを抑えて聞こえなかったふりをする事にした。まさかこんなタイミングで古傷を抉られる羽目になるとは……。
「でもまあ、何もやらないよりよかったんじゃないの?真姫さん、ああ見えて奥手そうだから、お兄ちゃんからも行動しないと進展しないもんね」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「お兄ちゃんがメール送る相手他にいないじゃん」
「うぐぅ……」
またもやダメージをくらい、本当に「うぐぅ……」と言ってしまうと、携帯が震えた。
それを手に取ると、小町は「がんばって!」といらん激励を残し、部屋を出た。
……つーか、一体何だ?このタイミングでメールとか……どっかから監視でもされてんのか?いや、これは我ながら自意識過剰で気持ち悪い……。
とにかくメールを……スパムじゃねーか。